就職課は教えてくれない、シュウカツの心得(後編)。

4月早々に採用活動を始めた会社では、概ね内々定の第一陣が出揃った頃だと思うが、今でも街を歩くと、リクルートスーツを着た学生さんがコーヒーショップでエントリーシートの写しとにらめっこしている光景を見かけたりして、なんだか切なくなる。


新学期が始まり、志望企業に内々定をもらって浮かれている人間の多いキャンパスの中、忸怩たる思いに駆られている人も決して少なくないと思うのであるが、内定者の半分は辞退するこのご時世。5月、6月に入っても採用活動は続いていく。


厳しい就活の洗礼を受けてもまだ可能性を棄てていない、あるいは、内々定はとって見たけれど何だか物足りない、そんな人々のために、ちょうど1ヶ月前に書いたエントリーの続きを書こうと思う*1

その4)自分の目で見たものだけを信じろ。

この時期は、どの会社でも説明会やらOB訪問やら面接やら、と一通りイベントが終わって、あちこちで風評が固まってくる頃である。


インターネットでのクチコミに加えて、各メディア、特に「日経ビジネス」や「東洋経済」のようなビジネス誌が、学生の歓心を買おうと、あの手この手で興味本位のネタ(給与ランキングだの、業界でのパワーランキングだの・・・と)を載せてくる時期でもある。


目の前の面接等の日程をうまく消化できない上に、次々と飛び込んでくる過多な情報を前に、「俺は負け組か・・・」などと頭を抱えている人はいないだろうか?


あるいは、自分が内々定を勝ち取った会社を賞賛する記事をクリッピングして、「俺は勝ち組だ」などと浮かれている人はいないだろうか?



個人的には、この手の情報は、話半分に見聞きしておけば十分だし、全くもってアテにすべきではないと思っている。


そもそも情報自体が誤りだったり、誇張されているケースは数知れずあるし、仮に情報が実態を忠実に表したものだったとしても、それはあくまで“現時点での瞬間風速”的業績なり状態を叙述したものに過ぎない。


そして何よりも、乱れ飛ぶ様々な評価は、あくまで記者や学生といった、部外者の眼から見てのものに過ぎないのだ。


自分の会社がメディアで取り上げられているのを見て、

「いつからこんないい会社になったんだ?うちは(苦笑)」

という経験を何度もした身としては、

「自分の目で見たものだけを信じろ」

と強く言いたい*2


ついでに言えば、その会社に合う合わないなんていうのは、個々人のパーソナリティ次第であることも忘れてはならない。


同期100人のうち99人が今すぐ辞めたい、と思うような会社(職場)でも、居心地がいいと感じる人間は必ず1人はいるものだ。あなたがその1人ではない保証はどこにもない。


今の段階で中をのぞくことはできないにしても、面接の場や、内定者懇親会の場などで感じたフィーリングは大事にしてほしいと思う*3(これについては苦い思い出もあるのだが、今日のところは割愛しておく)。

その5)採用を決めるのは運だけだ。

これまで面接官を何年かやってきた中で一番困ったことといえば、4月も中盤に差し掛かった頃の面接で、最後に「何か質問は?」とマニュアルどおりの投げかけをしたところ、

「私、これまで受けた会社全滅してるんですけど、私のどこがダメなんでしょうか・・・?」

と返ってきたとき*4


あいにく、自分の面接でも、その日の受験者の中では少し評価が落ちるなぁ・・・と思っていたところだっただけに一瞬言葉に窮したのだが、そこは思い切って、

「面接は運だよ。運。」

と返したのを思い出す。


別に学生を慮ったから、というわけではなく、実際そのとおりなのだ。


最近ではどの会社も「求める学生の理想像」みたいなものを説明会等でオープンにしているのだが、そこに出てくるのは、大概、

「チャレンジ精神を持った、行動的な人」

等々、子供でも書けそうなありきたりな“人物像”であって、これを客観的な採用の基準にすることなど到底不可能だ。


しかも、学生をふるいにかける面接官の側にしても大抵が素人である*5


社内から寄せ集められた、若手・中堅に、リク●ートあたりの講習を数時間受けさせて、即席培養したことにして、ぶっつけで面接対応させている会社も決して少なくないはずだ。


そうなると、もはや客観的な基準で絶対的な能力を見てもらうことなど不可能なのであって、あとは、その日、その面接官が対応した学生の中で、良さそうな人間をフィーリングでピックアップしていく、という作業しか残らない。

前のエントリーでも書いたように、日程によって面接を受けに来る学生の質には相当バラつきがある。


さらに、どんなに統制の取れた会社であっても、社員の価値観は様々であるのが普通で(でなければ怖い)、面接官が体育会系か、それともアキバ系か、によって「良さそうかどうか」、という評価の尺度も変わってくる。


こうなると、「なぜ内定できたのか」「なぜ落とされたのか」と問われても、

「それは運です」

としかいえないのは明らかだろう。


もちろん、いくら会社を受け続けても突破できない人にはそれなりの理由があるし、内々定を何社も手に入れている人にもそれなりの理由があるだろう。


だが、それもあくまで確率が高いか低いかの話に過ぎない。


相性やめぐり合わせさえはまれば、どんな人でも「当たる」可能性はあるし、それが就職人気ランキング上位常連の大手企業である可能性は十分にある。


良くないのは、世の中の情報に釣られ、受けている会社の傾向傾向に合わせようとして自分を見失うことだ。


多少の“お化粧”は必要だとしても、それ以上過分な演技をする必要はないし、変えようもない“経歴”をごまかす必要もない。


必要なのは、自分と波長の合うボールがど真ん中にやってきたら、バットを迷いなく振りぬき、力強く打ち返すこと。ただそれだけである。

その6)内定者にも辞退する権利はある。ましてや内々定者をや。

既に内々定をもらっている学生の皆様のために、大事なことをお知らせしておこう。


昔あった都市伝説で、某証券会社に内々定した学生が辞退を申し出ると、喫茶店に呼び出されて「カレーとコーヒーどっちがいい?」と聞かれ、選んだ方をぶっ掛けられる、というのがあった*6


そんなこともあってか、今でも内々定を辞退するときに律儀に人事に仁義を切ってくる人は多いようだが、個人的にはそんな余計な手間はかけなくて良いと思っている。


多額の栄養費をかけて獲得されたプロ野球のドラフト1位選手ならともかく、通常の採用ルートで取られた学生の代わりなんていくらでもいるし、それは会社の人事が一番良く分かっていることだ。


もちろん、人一倍愛社精神の強い人事の担当者にとって、自分の会社を辞退して他の会社に行きます、と言われることほど悔しいことはないから、ネチネチと、

「ねぇ、君分かってる?大人の世界にはルールってものがあるんだよ?」

みたいなことを言うだろうが、そういう嫌らしい説教の電話をしながら、裏で手元の書類をシュレッダーにかける準備をしている・・・、それが会社というものの現実だ。


よほどインパクトの強い辞め方でもしない限り3日もすれば忘れられる、内定者なんて所詮その程度の存在なのだ、ということを、学生の皆さんは、よくよく自覚しておいたほうが良い。


逆に言えば、内々定のお断りなんて、電話かメール一本で十分である。


転職のチャンスがすぐ巡ってくる時代とはいえ、最初から道を間違えなければそれにこしたことはないのだから、会社の思惑なんぞに惑わされず、じっくりと進路を決めてほしい。


なお、会社によっては学生が迷いを見せると、札束使って飲ませてくれる会社もあるから、さりげなく断るか、もったい付けて迷いを見せるか、は作戦次第、なのも事実なのだが・・・*7



以上、不良社会人からのメッセージはこれにて終わりである。


信じるも信じないも読者の皆様の自由だが、最後に一言。

シューカツは大学の卒業証書をもらうまでは終わらない。


皆様の健闘を祈っている。

*1:前回のエントリーは、http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20080320/1206035284

*2:特に投資家の評価が高い“優良企業”に入ろうとする人は注意すべきだろう。投資家に評価されるパフォーマンスの高さが、従業員の犠牲の上に成り立っている可能性は決して低くないからである。例えば某自動車会社のように・・・。

*3:勇気のある人は、途に迷ったふりをして、会社担当者控室の中でも覗いてみると、より社風の核心に触れることができるだろう。

*4:「いいひと。」かなんかで同じようなシーンがあったと思うが、まさか現実にこんなことがあるとは・・・。

*5:時々、人事部の人間が面接をやっていると勘違いしている学生がいるが、相当最終段階にならないと人事の人間なんていうのは出てこないものだ。お忙しい人事様に学生の相手をする暇などあるはずがない(苦笑)。

*6:都市銀行の場合は、「うちの取引先が何社あるか知ってる?」と脅しをかけてくる、なんて伝説もあった。

*7:役得に与れるのは学生だけではなく、フォローに行く若手・中堅OBも同じことで、その意味では「悩みを見せて」くれたほうがありがたかったりもするのだが・・・w