公取委がJASRACの立ち入り検査を行った、というニュースを聞いて、「それ見たことか」と喝采を挙げた人々は決して少なくないだろうと思う。
だが、
「JASRACが放送局と結んでいる「包括利用許諾契約」が管理事業者の新規参入を妨げていると判断。透明性の高い個別契約を可能にする技術開発を促す動きとも言えそうだ。」(日本経済新聞2008年4月24日付朝刊・第13面)
というのはどうか・・・。
確かに、音楽著作権管理が自由化された後も、JASRACがこの分野で圧倒的なシェアを握っているのは周知の事実なのだが、そこにはちゃんとユーザー(特に放送局)側のニーズもあるわけで、許諾窓口が複数になってしまう煩雑さ(そしてそれによってもたらされる無駄な社会的費用の増大)を考えると、
「JASRACだけでいいじゃん」
という感情も(そしてそれを察した著作権者がJASRACに流れる現象も)合理的なものとして説明できるのではないかと思う。
スタッフを増やしすぎたせいもあってか、最近の公取委はやたらと暴走気味なのだが、本件もまさにその一環というべき事象で、世の中、単に競争させればいい、という世界ばかりではないことを公取委が果たして理解していたのかは疑わしい。
もちろんJASRACからの権利者への利益配分が丼勘定になってしまう、という現状には問題があるのだが、少なくとも、それを是正するのが公取委ではない、ということだけは確かだと思うのである・・・。