J1・川崎フロンターレの我那覇和樹選手に対するドーピング違反制裁をめぐり、スポーツ仲裁裁判所(CAS)でJリーグの処分を無効とする裁定が下った*1。
日経紙上では、「潔さ欠くJリーグ」として、CASに不満をぶつけるコメントを連発したJリーグ関係者の姿勢を糾弾している。
短期間の仲裁手続きで、自らの判断を覆されたJリーグ側の「無念」も一応理解できるのであるが、「何が(ドーピング規程が適用されない)正当な医療行為であるか」についてJリーグ側による具体的な説明がなされておらず、選手側にそれを判断する能力も材料もなかった、という本件の前提事実の下では、「我那覇選手の行為がドーピング違反にあたるのかどうか」を判断する必要がない、というCASの出した結論にもさして違和感はない。
Jリーグ側の原秋彦弁護士(日比谷パーク)は、
(裁定の論理構成に)「驚きを禁じ得ない」
と仰られているそうだが、複雑な実体判断に踏み込むことなく手続面だけで結論を出す、というやり方は、他でも見られるところであるし、仲裁によることを受け入れた以上、仲裁裁判所が出した結論にあまりに露骨に異を唱えるのもいかがなものかと思う。
それにしても、自らの潔白を証明するために、多額の費用を費やしてでも仲裁を求めた我那覇選手の執念には感服せざるを得ない。
Jリーグとしては、国内での仲裁を突っぱねた時点で矛を収めてくれる、なんて淡い期待をしていたのかもしれないが、もはやそんな甘い時代ではない、ということなのだろう。
千葉すず選手の事件から8年、確かに時代は動いている・・・。
*1:Jリーグサイトに邦訳が掲載されている。http://www.j-league.or.jp/release/20080528-02.html