フィリピン人母と日本人父の間に生まれた子に、届出による日本国籍取得を認めるかどうか、が争われた事件で、最高裁大法廷が国籍法の規定を違憲(憲法14条1項違反)と判断した上で、原告らの請求を認容する判決を下した。
率直な感想を言えば、どんな理由をつけても、これは
「裁判所による法創造」
以外の何ものでもないだろう(笑)と*1。
結論の是非はともかく、これまでささやかな「少数意見」(大概、泉徳治判事あたりの・・・)として述べられるに過ぎなかったような理屈で多数意見が書かれ、原告が救済されたのを見ると、「裁判所も変わったなぁ」という思いを強くする。
なお、一部の報道や識者のコメント等に「法律婚重視傾向が変化した」とか、「多様な家族関係を承認」といったものが散見される。
確かに多数意見の中にも、立法目的と法律上の区別の合理的関連性を論じるくだりにそれっぽい記述があるのだが、本件で12名もの裁判官が「国籍法違憲」という判断を下したのは、「国籍の付与」という行為が子の身分に極めて重大な影響をもたらす行為であり、その重大性に比べれば、準正があったか否かは大したことではない、と考えたからに他ならないというべきであろう。
ゆえに、この判決を機に、最高裁が「法律婚によって形成される家族関係」とそれ以外の“家族”の区別を全て解消する方向に向かうか、と言えば、疑問なしとはしない*2。
また、本件では、
「嫡出子と非嫡出子」
の間の「差別」*3に加え、
というギャップが存在したことも、結論に少なからず影響を与えたように思われるから、「法律婚」の論点だけに固執して論じるのは、少し先走りすぎているようにも思える。
いずれにせよ、「裁判所に何ができるのか?」という大きなテーマを考える上では格好の素材となるであろう本判決。
機会があれば、充実した補足意見・少数意見も含めて取り上げる機会を持ちたいと思っているが、いつになるかは保証の限りではないのであしからず・・・。