やっていいこと、悪いこと。

日経新聞の月曜法務面(法務インサイド)、「ネット中傷 企業も悩む」というタイトルの下で、関西のある住宅関連会社の「ネットでの中傷被害の拡大を防ぐチーム」が行っている、ある取り組みが紹介されている。

「社員はブログに自社名と「悪徳商法」という言葉を文脈とは関係なくしのばせ、頻繁に更新している。このため、この二つの言葉で絞り込み検索をすると、結果の上位を社員ブログが占めるようになる。ブログは中傷情報を探そうと検索した利用者に対するダミーサイトの役割を果たすしくみだ。」(日本経済新聞2008年6月16日付朝刊・第19面)

記事によれば、この会社、「関連検索」項目に、自社名と並んで「悪徳商法」という単語が自動表示されることに辟易し、

「大手検索サービス会社に対して表示差し止めを求める仮処分」

まで申し立てたのだが、東京高裁で抗告が棄却されたという経緯があるようで、“自衛策”として上記のような取り組みをしているようなのだが・・・・。


「中傷サイトの情報を欲しがる利用者もいる。検索サイトは中立であるべきだ。」

という検索サービス会社の法務担当者の言を借りるまでもなく、この会社が行っている一連の“取り組み”は、企業の取るべき行動として、決して感心できるものではない。


検索エンジンの表示をめぐっては、海の向こう側でも紛争が頻発していることは良く知られていることで、仮処分を申し立てたところまでは一応許容できる。


しかし、わざわざネガティブワードをまぶしてまで、本来求められていない情報へとインターネットユーザーを誘引するようなことが、“企業の自衛策”として堂々と認められるならば、そうでなくてもカオスなこの世界によりいっそうの混乱を招くことにもなりかねない。


仮に、ユーザーが中傷情報の書かれたサイトにたどり着いたとして、そこに書いてある内容をどのように判断するかは、ユーザー自身が決めることである。


明らかに“中傷”が自己目的化したようなサイトであれば、見る人が見れば“当てにならない”情報だってことは容易に判別できるだろうし、仮にもっともらしい“中傷”が掲載されていたとしても、それを上回るくらいの高評価が他のサイトで下されていれば、それで十分に打ち消しあえる話なのだ。


大体、会社名と「悪徳商法」が関連検索でリンクするほどの状態になってしまう、ということは、それだけその会社の商法に疑問を持った人間が多かった、ということの裏返しでもあるのだから、セコいダミーブログの作成に血道をあげるヒマがあったら、本来業務で名声を高める方に労力を費やすべきだろう。




・・・というのが、筆者が最初に記事を見たときに抱いた率直な感想であり、一応の「正論」たりうる見解であるとも思うのであるが、仮に自分のブログが「関連検索」で変なキーワードと組み合わされるようなときが到来したら、やはりそんな悠長なことも言っていられないんだろうなぁ・・・と漠然と思う。



やっていいことと悪いことの境目、許される自衛策とそうでないものとの境目・・・。


いろいろと考えさせられることは多い。

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