与党の「新雇用対策に関するプロジェクトチーム」(座長・川崎二郎衆院議員)が、労働者派遣制度見直しの基本方針をまとめた、という記事が載っている*1。
記事を読む限りでは、内容として
「日雇い派遣の原則禁止」
と、
「グループ企業など特定企業を主な派遣先とする『専ら派遣』に対する規制」
が柱になるようで、一言で言えば、最近の“時流”を良く捉えた、極めてミーハーな制度改革案、ということができるだろう。
日経新聞らしく、記事の主眼は“産業界の批判”や“弊害が生じる懸念”に向けられているようだが、労働者をこよなく愛する厚労省の中の人たちも、向いているベクトルは同じだったりするようだから、与党のお墨付きが得られれば、勇んで法改正原案を作ることだろうと思う*2。
ちなみに、「日雇い派遣」を禁止したら、
「毎日どこに行かされるか分からず、不安な日々を過ごしている日雇い派遣労働者」
は救済されるのかもしれないし、「専ら派遣」を規制したら、
「本来、もっと高い給料をもらえたはずなのに、派遣待遇のせいで割をくっている労働者」
は救われるのかもしれない。
だが、物事には何事も裏表がある。
今、「日雇い派遣」で補われている職種のほとんどは、元々、「日雇いバイト」が担っていた職種だ、というのはあえて説明するまでもあるまい。
「日雇い派遣」が「日雇いアルバイト」になったところで、“生活の安定”や“格差縮小”に直ちにつながるはずもないだろうし、かえって(募集経費に懐を食われた企業側による)待遇引き下げを招くおそれだってある。そこまで行かなくても、履歴書を書く手間は確実に増えるだろう。
「専ら派遣」は確かに何だかなぁ・・・と思うが、そういうところの方が、概して一般の派遣会社よりも待遇が良かったりするし、決して待遇が良いとは言えない場合でも、特定の企業のオフィスで仕事がしたいから、という理由で、その「特定の企業」系列の派遣会社に登録する人は、決して少なくないはずだ。
悪質な二重派遣や、本来正社員が担うべき仕事を丸々系列企業の派遣社員に代替させるような事例は現に存在しているのだろうし、“労働者派遣”の是非が議論されるときには、必ずといって良いほどそういう極端な事例が槍玉に挙げられるのであるが、本来そういうレアケースは法の解釈・運用次第でいくらでも救済できるはずで、そこであえて制度を丸ごと消滅させることが、本当に「派遣労働者」総体の利益になるのだろうか?
いつもなら、窮屈な残業規制だの何だの、と、あくまで集団的・画一的な“保護”に動きがちな立法担当者が、こんなところだけ個別事例の救済に走ろうとするのは不可解、といわざるを得ない。
これに喝采を挙げる人が多い、っていうことであれば、そういうものかと諦めるほかないのであるが・・・・。