昔憧れだったHEROの引退。

3年ぶりにようやく復帰したメジャー(といっても日本市場を当て込んだ(?)ヒルマン監督のロイヤルズ)で、開幕早々に戦力外通告を受けた時点で、遅かれ早かれこういうことになることは予想できたのだが・・・

「日本人選手の米大リーグ進出の実質的な先駆けとなり、日本と大リーグで通算201勝(155敗)を挙げた野茂英雄投手(39)が現役引退の決意を固めたことが17日、分かった。」(日本経済新聞2008年7月18日付朝刊・第37面)

野茂が日本のプロ野球でデビューした頃には、自分は既に単純に“憧れ”を口にできるような子供ではなくなっていたし、メジャーに行った頃ともなれば、立派に酒を飲める年齢になっていたわけなので、「昔憧れだった・・・」などというのは気恥ずかしいのだが、自分が“野茂スピリッツ”に心酔していた時期は確かに存在した。


どんだけ心酔していたかといえば、

「就職活動の信条調査の「尊敬する人」の欄に「野茂英雄」と書いてみた。」(笑)

等々*1、枚挙に暇がないほどのエピソードがある。


元々、日本でデビューした時のインパクトが鮮烈だったし*2アメリカに渡った経緯も衝撃的だった*3


自分の根っこがヘタレなだけに、「既成の価値観の破壊者」の象徴的存在だった彼に惹かれたのも無理はない話で。


バブルの後始末、阪神大震災オウム真理教・・・と暗くなっていく一方の時代の中で、野茂投手が積み重ねていく白星は、鬱積した感情を晴らす絶好の清涼剤だったし、下手にメディアに媚びようとしないあのスタイルもひたすら格好よかった・・・。



正直、選手が引退する時はどんな辛口メディアでも優しくなるもので、今回の報道で新聞各紙が書きたてている賞賛の声を鵜呑みにしてしまうのはちょっと危険だ。


日経の篠山記者は、

「渡り歩いたどの球団でも野球に対するいちずな姿と、選手生命の危機も顧みず、日米の懸け橋となった英雄的事跡によって選手やコーチの尊敬を集めてきた。」

と絶賛しているが、“戦力”としての要素以外の部分で本当に必要とされていたのであれば、果たしてあれほど球団を渡り歩く必要があったのだろうか? という疑問も当然出てくるところだろうし*4、日米問わず40歳過ぎても現役で活躍している選手もたくさんいることを考えると、30歳後半に差し掛かったあたりで実質的な選手生命を終えてしまった彼の「野球に対するいちずさ」に疑義の声を上げる人が出てきても不思議ではない。


ちょうど野茂選手と同年生まれの杉浦正則投手*5が、去年あたりから実業団の監督としてチームを率いている姿などを見ると、人生を長いスパンで考えた時、何がベストの選択なのか、ということさえ分からなくなる*6


だが、「周りが与えてくれるお膳立てについつい乗っかって、それに安住してしまいがちな人間の性」というものを考えた時、野茂選手がしでかしたことが、誰にでも真似できるようなことではないことだったのは確かで、海を越えて10年以上の歳月が流れた今でも、その一点の評価だけは、自分の中で変わらないし、「野茂英雄」が「歴史の中のヒト」になったとしても、変わることはないだろうと思う。



ちなみに・・・・


学生時代の自分の口癖は、

「自分27の歳になったら、「世界」に飛び出す」

だった(苦笑)。


今考えると(いや当時から)失笑もの以外の何ものでもない*7


もちろん、今でも心の中では、

「いつか自分にとっての「メジャーリーグ」に・・・」

と思っているが、どっちかと言えばやっていることは同世代の巨人の上●投手に近いし*8、そのたとえでいうなら、そもそも自分は「プロ」の域にすら達していない*9


まぁ、プロ野球選手の寿命よりは、リーガルスペシャリストとしての寿命の方が長いわけだから・・・と自分を慰めている今日この頃。


もう少し、夢は捨てずにとっておくことにしよう。



おっと・・・夢じゃない、「目標」だった*10

*1:大人しく親とか教師の名前書いとけばいいのに・・・(苦笑)。ちなみに同じ用途で「寺山修司」とか「チェ・ゲバラ」とかいうのも使ったことがある。

*2:登板するごとに、一試合にいくつ三振をとるかが話題になった選手は、あれ以降出てきてないような気がする。(強いて言えば松坂大輔投手くらいだが、「奪三振」のインパクトに関していえば、あそこまでのものではなかった。

*3:ターニングポイントとなった94年のシーズンは、肘の故障やら、鈴木啓示監督との確執とやらでシーズン通して本調子とは言い難い出来。ヤケッパチで「メジャーに行く」って言い出したんじゃねーのか?と素人(といってもメディアの中での肩書はそれなりに立派だったりする人々)に批判されても仕方ないような状況ではあった。

*4:代理人の力量や方針によるところも大きかったのかもしれないが、決してエース級の成績を残していなくても、首脳陣や周囲の選手とのコミュニケーションをうまくとることによって特定の球団の中で長く活躍した(生き残った)選手もいることを考えると、この辺の評価は微妙なのではないかと思う。

*5:全日本のエースとして活躍しながら、メジャーリーグどころか、日本のプロ野球にさえ足を踏み入れずに、アマ野球選手の「模範」としての人生をまっとうされた。

*6:選手を引退した後に、野茂選手が監督やコーチとしてユニフォームを着てグラウンドに立つ姿はちょっと想像できない。

*7:まぁ、実際その時期ターニングポイントになるような出来事はあったのだが、いかにもスケールが小さい話だったし・・・。

*8:毎年のようにメジャー志願して毎年のようになだめられて残留する。制度が確立されていないこともあるが、本人が本気で戦う気になれば球団を飛び出すことは不可能ではなかったはずで、そうこうしているうちに今年の大不振(ようやくFA資格も取れたというのに・・・)。心情が伝わる分親しみは湧くが、端から見ている分には何とももどかしい・・・。

*9:リーガルな仕事へのこだわりだけは「プロ」レベルだが、「プロ」として評価されるだけのステータスを確立しているかといえばなんとも覚束ないし、“海を渡って”通用するような資格もない。

*10:松坂大輔選手の言葉を思い出して訂正・・・。

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