前々から話題にしていた派遣労働法制見直しの動きだが*1、厚生労働省が「方針を固めた」というニュースが日経新聞に掲載された*2。
日経にこういう記事が載る、ってことは、9割方その内容で法案(政府原案)化される見込みになった、と考えて良いと思うのだが、中身を見ると、相変わらず“派遣労働者のニーズ”に真に沿ったものとはいいがたい状況である。
いや、むしろひどくなった・・・というべきか。
その際たるものが、
「厚生労働省は派遣されている間だけ雇用契約を結ぶ「登録型派遣」のうち、契約期間が1ヶ月以内の派遣を原則禁止する方針を固めた。日雇い派遣の禁止を検討していたが、労働者の雇用をより安定させる狙いから規制の対象とする期間を拡大する。」
というところであるのは言うまでもない*3。
禁止の例外として、
「専門業務を中心に、日雇い形態の派遣が常態化しているもの」
という分かりにくい基準が上がっているが、某軽作業請負会社の“不祥事”が今回の見直しの発端になっていることを考えると、単なるイベントスタッフや引越しバイトのような如き業務は、ここに含まれなくなる可能性もある。
「日雇い派遣」規制の問題点については、前回のエントリーでも指摘しているので繰り返さないが、これで、「登録型」による短期間派遣の道がなくなるとすれば、働く側にとっては制約の多い「常用型派遣」による派遣か、働く側がアクセスしにくく、かつ手間もかかる各派遣先会社による個別の直接雇用(アルバイト)くらいしか選択肢は残らない。
場合によっては、派遣先の側で仕事の効率化を進めることによって、派遣対象となっていた仕事自体を消してしまうことだって考えられるだろう。
それによって、今、「日雇い派遣」を利用している労働者のニーズを満たすことが果たしてできるか、といえば*4、とてもじゃないが、そうとは思えない。
元々政治的な思惑が見え隠れする、今回の制度見直し。
だが、現在生じている(と言われている)様々な問題が、制度そのものの欠陥に由来するものなのか、それとも法令順守意識の乏しい一部の派遣元企業が犯した過ちに過ぎないのか、ということについて、十分な検証がなされているとは到底いえない状況で、現実に「日雇い派遣」に従事している人々の“生の声”*5を十分に反映したとは思えない制度の見直しを行うことがプラスに働くか、と言えば大いに疑問はある。
既に賽が振られてしまっている以上、細かいことを言っても仕方ないし、筆者としては、今回の制度変更が労働者にとっての更なる悲劇を生まないことをただ願うのみなのであるが、率直な心情としては、もう少し何とかならないかという思いが残る、そんな改革案である。