JASRAC対動画投稿サイト

“場の提供者”の著作権侵害の成否をめぐる議論に新たな歴史を刻むかもしれない訴訟のはじまりを告げるニュースが一つ。

日本音楽著作権協会JASRAC)は6日、協会が著作権を管理する音楽が流れる動画を無断で掲載したとして、動画投稿サイト「TVブレイク」を運営するパンドラTV(東京)に約1億2800万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。JASRACが動画投稿サイトを提訴するのは初めて。」(日本経済新聞2008年8月7日付朝刊・第42面)

記事によれば、4月時点で、「TVブレイク」には使用許諾のない動画ファイル2万件が投稿され視聴回数は計381万件を超えていたそうであるが、

JASRACはパンドラTVに対し複数回、文書で許諾手続きを取るよう求めたが、先方が手続きを拒んだ」

ために提訴に踏み切った、ということである。


動画、静止画を問わず、権利者の許諾を得ていない画像を掲載したサイトはこの世に無数に存在するわけで、その中であえて「TVブレイク」に白羽の矢を立てた理由は定かではないが、これでトントン拍子でJASRAC側が勝ち進むようであれば、類似サービスに与える影響は大きいだろうし、逆にサイト運営者の責任を問えない、ということになれば、権利者は大きな衝撃を受けることになるわけで、本件が我が国における同種訴訟の試金石になるのは間違いない。


記事には、パンドラTVの、

「サイトは『プロバイダ責任制限法』に基づいて運営している。見解の相違点については裁判で明らかにしていく」

というコメントが掲載されており、サイト運営者はあくまで「中立的な立場」に過ぎない、という、この種の訴訟におけるスタンダードな反論が予想されるが、近年拡大傾向にあると指摘される間接侵害法理の前にこのような反論が通用するのか*1


来年の夏を楽しみに待つことにしたい。

*1:私見では、ロケーションフリーやオンラインストレージサービスに比べると、運営者の侵害への寄与度が大きいような気もするのだが・・・。

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