「ハリポタ百科」の出版差し止めに思う。

昨日「フェアユース」導入に関する懐疑論をちょっと述べてみたのだが、タイミングよく夕刊にこんな記事が載っていた。

「米ニューヨーク連邦地裁は8日、世界的なベストセラー小説「ハリー・ポッター」シリーズの非公式ガイド本の出版差し止めを認める判決を下した。独立系の出版社が昨年末、ファン運営サイトの内容をまとめた“百科事典”を出版、原作者J・K・ローリングさんらが「著作権の侵害」にあたるとして発売中止を求めていた」(日本経済新聞2008年9月9日付夕刊・第16面)

被告であるRDRブックス社のサイト*1には、

We are encouraged by the fact the Court recognized that as a general matter authors do not have the right to stop the publication of reference guides and companion books about literary works. As for the Lexicon, we are obviously disappointed with the result, and RDR is considering all of its options."

というコメントとともに、判決文が掲載されている。
http://www.rdrbooks.com/pdf/lexicon_order.pdf


きちんと全文を読んだわけではないが、ざっと見ると、出版社側が主張した“fair use”の抗弁が認められずに上記のような結論に至ったようだ。


背景には、ストーリーやキャラクターに関する作者と出版社の解釈の違いもあるようで、どこまでが純粋な「著作権」の問題なのかは分からないが、いずれにしても、洋の東西を問わず、権利者のご機嫌を損ねると出版に大きなリスクを伴うことに変わりはない、ということなのだろう。


ホワイトリストとして列挙された権利制限事由に明白に該当する、といえる場合でない限り、権利行使をめぐるトラブルは生じうるし、そこに著作物を利用しようとする者にとってのリスクは存在する。


我が国のフェアユース積極論者が、この手の出版物まで適法化することを望んでいるとは思わないが、一方で、フェアユース規定の導入によって、ユーザーにとってのリスクが減少する、といった類の主張もあるのは確かで、そういった主張については、疑ってかかる必要があるように思う。


もちろん、昨日ブクマで寄せていただいたコメントにもあったように、「ないよりはまし」というのもまた真実ではあるのだが。

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