以前取り上げたことのある、「風車写真著作権侵害疑惑」*1だが、とうとうNHKとその職員らが書類送検される事態となった。
写真家の側が告訴している以上、遅かれ早かれ送検されるのは当たり前の話であって、本来このニュース自体が大きな意味を持つわけではない(大きな意味を持ってくるのは「起訴されるか否か」の方だ)。
だが、世の中に与えるインパクトはやはりそれなりに大きいというべきで、(一時に比べれば下火になったとはいえ)このところいいニュースを聞かないNHKにとって見れば泣きっ面に蜂、といったところだろう。
実際のところは、起訴できるかどうか、あるいは強引に起訴したとして有罪に持ち込めるかどうか、は微妙なところだと思う。
民事事件であれば過失でも著作権侵害は成立するから、放送局とあろうものがその辺に飾ってある写真を接写かつ改変して使用しようものなら、少なくとも「過失」は認められる可能性が高いだろうが*2、刑事責任を問いうるのは「故意犯」のみである。
新聞記事の中では、NHKのコメントとして
「取材先の会社の了解を得ていたので、問題ないと判断し取材、放送した」
(日本経済新聞2008年9月18日付朝刊第43面)
という一文が掲載されている。
これが民事事件だったら、「お前は著作権を知らんのか!」*3ということになるだろうが、刑事事件の場合、
「正当に許諾を得たので著作権侵害にはならない」
と本気で取材者が思いこんでいれば、著作権法違反の故意が阻却される、という解釈も成り立たなくはないから、起訴まで持ち込むのはさすがに難しいんじゃないのかなぁ、というのが率直な印象であり、結局、送検された刑事事件の方はしばらく寝かされて、同時に提起された民事訴訟の結果待ち、ということになるような気がする。
まぁ、紛争の結末がどうなるかはともかく、本件がJTB事件に続き、「写真(家)の恨みは恐ろしい」ということを世の中に知らしめた事件となったことは間違いない。
我々のような、使わせていただくしか能がない立場の人間としては、くれぐれも気をつけたいものである。
*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20080625/1214608610
*2:もっとも本件では、利用態様に関する事実関係自体に争いがあるようだから、そう簡単に片付けられるかどうかは分からない。
*3:「取材先=写真の所有者」が必ずしも「著作権者」ではないのは、業界では半ば常識であり、取材者が本当にそれを知らなかったのだとしても、注意義務違反を問われても全く不思議ではない。