公取委委員差し替えの衝撃。

長らく続いているねじれ国会のせいで、対象者の適性如何にかかわらず、同意を得られずに宙に浮いてしまった人事が数多くあるのだが、「出す前に差し替え」となってしまうと、事態はより深刻だ。

河村建夫官房長官は21日の閣議後の記者会見で、政府が公正取引委員会委員として提示した上杉秋則・元公取委事務総長について「同意人事の案件から落とさざるを得ない」と述べ、差し替える方針を示した。」(日本経済新聞2008年11月21日付夕刊・第2面)

上杉氏、といえば、ここ数年の独禁法改正に深く関与した当局の第一人者として、企業法務界で知らない者はいないほどの有名人である。


元事務総長の枠を引き継ぐ形で、委員として名前が挙がるのも当然と言えば当然の話で、それがこんな事態になってしまったのだから、これが関係者にとってどれほどの衝撃なのか想像も付かない。


指摘された問題事象自体は、決して笑って済ませられるような単純な話ではないように思われるだけに*1、ねじれ国会に伴う他の“宙ぶらりん人事”とは区別して考えるべきなのかもしれないが、それでも、昨年の参院選前の国会であれば、ここまで大騒ぎされる問題に成り得たのかどうか、疑わしいところである。


独禁法エンフォースメントバブル”ともいうべき情勢が続いている昨今のことだから、こと当のご本人にとっては、今回の“ハプニング”が結果的に吉と出る可能性はあるのだが*2、わずか4人しかいない委員の人事にこのような混乱が生じたことで、(これまで右肩上がりに勢力を拡大してきた)公取委という組織の行く末に翳りが生じたような気がしないでもない*3


筆者としては、事態が早期に収拾されることを望みたいものであるが・・・。


リニエンシー時代の独禁法実務―グローバル経済下におけるコンプライアンス対応

リニエンシー時代の独禁法実務―グローバル経済下におけるコンプライアンス対応

*1:書籍の宣伝チラシの方はともかく、法律雑誌の連載コラムの件などは、我が国において「弁護士」という肩書が持つ特殊な意味をあらためて思い知らせてくれるような話で、複雑な気分になる。

*2:一委員として公取委に関与するよりも、法律事務所の「シニア・コンサルタント」という立場で自由に発言を続けた方が影響力を行使できる可能性があるかもしれないし、報酬面でも・・・(以下略)。

*3:少なくとも「政治」との関係で保たれていたこれまでのバランスが狂う懸念を拭い去ることはできない。

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