シンドラーエレベーターがメディアの狂信的な追及にさらされていたのは、2006年の初夏のことだったか。
このブログの当時のエントリー*1にも“異常な季節”の香りは十分漂っているのだが、気が付けばあれから早2年が経った。
今でもシンドラー社のエレベーターはあちこちの建物に入り続けているし*2、日々動き続けているのだが(しかも時々不具合も起こすのだが・・・)、飽きっぽいメディアのターゲットはすっかり次のところに向かってしまっていて、いつものことながら空しい限りである*3。
そんな中、「事故後」の動きを報じるニュースがようやく出てきた。
「東京都港区のマンションのエレベーターで都立高2年、市川大輔さん(当時16)が死亡した事故で、大輔さんの両親が12日、事故機の製造元のシンドラーエレベータ(東京・江東)などに安全配慮義務違反があったとして、計2億5000万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。」
「ほかに訴えられたのは保守管理を担当した「エス・イー・シーエレベーター」(台東)、「日本電力サービス」(多摩市)、区住宅公社と、マンションを所有する港区。」
(日本経済新聞2008年12月12日付夕刊・第19面)
記事を読む限りでは(&常識的に考えれば)、シンドラーエレベータに対しては製造物責任法に基づく責任を、エス社と日本電力サービスに対しては修繕義務を怠ったことによる一般不法行為責任を、そして、住宅公社などには安全配慮義務違反に基づく責任を、それぞれ追及しているものと思われるのだが、後二者はともかく、シンドラー社に対する製造物責任追及がどこまで認められるのか、ということについては予断を許さない。
「港区ポータルサイト」には、事故原因究明に向けた区側とシンドラー社とのやり取りが時系列で記されているが(http://www.city.minato.tokyo.jp/joho/tyosa/elevator/index.html)、まともな情報開示を受けられていない状況であるようで、事故原因に関する根本的な検証には程遠い状況。
刑事手続きについては、
「警視庁はブレーキ系統の構造上の問題や、保守点検のミスの有無について捜査。シンドラー社やエス社の刑事責任を慎重に調べている。」
ということだが、こちらの方もまだ本格的な動きが出てくるには至っていない。
シンドラー側が頑なに設計・構造上の欠陥を否定している以上、原告側代理人が訴訟を進めるには相当な困難を強いられるのではないかと思う。
「明らかにここに責任がある」と断定するのが難しい事案だけに、裁判所も早期に和解で落としどころを探っていくことになるのだろうが、当事者が(実質的には)外国企業だったり、自治体だったりもするから、余計に見通しが立てにくい*4。
あまりに訴訟が長期化して、“シンドラー”の名前すら忘れ去られてしまった、なんてことにならなければ良いのだが。
遺族の方々のためにも。そして、第二、第三のエレベータ事故を起こさないようにするためにも・・・。
事件が風化する前にきちんとした決着が付くことを願いたい。