学士院新会員発表

新しい日本学士院会員に法学系から3氏が選出されている。


特に、民事訴訟法の竹下守夫・駿河台大総長(一橋大名誉教授)(76)、商法の龍田節・同志社大特別客員教授(京大名誉教授)(75)とともに、労働法の菅野和夫・明治大法科大学院教授(東大名誉教授)が選出されたことは特筆すべきことだと思われる*1


あえてご説明するまでもないだろうが、学士院のホームページ*2に掲載された菅野和夫教授の「業績」は、以下のようなもの。

菅野和夫氏は、日本では第2次世界大戦後に本格的な研究が開始された労働法学を法律学として確立させるという大きな功績を挙げました。また、学際的手法を導入して労働法研究に新しい地平を開きました。」
「菅野氏は、労働法の特殊性を考慮しつつ、労働法を全法律体系の一分野を担う普遍性を備えた法解釈学の体系として打ち立てました。これは、画期的な仕事であり、日本の労働法学を大きく転回させたものです。」
「また、同氏は、労働経済学、労使関係論などの諸科学の成果を十分に咀嚼(そしゃく)して、学際的な研究も進め、関係諸科学の関係者からも高く評価されています。」
「なお、同氏は、国際学会で総括報告者に選ばれるなど、国際的な活動においても大きな貢献をしています。さらに、その優れた学問を背景とした立法への直接・間接の関与も少なくありません。個別労働紛争の増加に対応して2004年に立法化された労働審判制度の構築に大きく寄与したのは、その一例です。」

このうち、「労働法学を法律学として確立させること」といったフレーズには、ちゃんと解説も付されている。


正直、いまだ“法律学でない労働法”を唱えている輩は世の中に多いのであるが(労にも使にも)、少なくとも裁判所レベルでは、法律としての労働法が機能するようになり、(労使関係の特殊性に配慮しつつも)労働契約を契約法の原則をベースとしたものとして位置付けることができるようになった背景に、菅野教授の多大なる業績があることは間違いない。


そして、現会員・物故会員問わず、錚々たる顔ぶれの先生方が居並ぶ*3学士院に、労働法研究者である菅野教授が名を刻まれた、という事実は、極めて大きいことであるように思われる。


今後のますますのご活躍を祈念して・・・。

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