“誤”配当で済む問題なのか?

「2008年3月期に配当原資がマイナスに陥っているにもかかわらず、一株あたり1.5円(総額3億4400万円)の配当を実施、会社法の規定に抵触していた。」(日本経済新聞2009年4月3日付朝刊第3面)

として、金融庁福島銀行に業務改善命令を発動する方針を固めた、という間抜けな記事が載っていた。


会計処理のミス、は、多かれ少なかれどんな会社でも起きうる話で、どんな大企業でも、仕事のコアな部分を「一担当者」がやる、という点においては、社員数名の中小企業となんら変わりはないから、表に出す寸前まで“間違ったままの状態”が維持され続けたまま仕事が進んでいた、なんてことも決して珍しいことではない*1


だが、“あわや間違えるところだった”という話と、“本当に間違えちゃいました”という話は、全く異なる。


第二地銀とはいえ、福島銀行は紛れもない東証1部上場企業なのだから、それ相応のペナルティを受けてしかるべきだろう。


ここで気になるのは、記事のトーンが、全般的に“ゆるい”ように感じられることだ。


たとえば、

「誤配当について、金融庁は一般企業でもほとんど例がなく、法律・会計を熟知し、取引先の経営を指導すべき立場にある銀行が初歩的なミスを犯したことを重視。早急に内部管理体制の改善を図る必要があると判断した。ただ、福島銀が粉飾決算を意図したり、故意に配当の算出を誤ったとはみていないもようだ。」(同上)

といったくだり。


過去にも、一般の事業会社の会計処理、配当処理をめぐる問題は散々報道されてきているが、明らかに“確信犯”と言えるような悪質なものがあった一方で、“ついうっかり”的な事例も決して少なくはなかったように思う。


にもかかわらず、これらの“ミス”が、日経紙上で厳しく糾弾されてきたのは記憶に新しい。


今回は、開示されていた計算書類の記載自体には問題がなかった(?)ようで、それが心証に影響した可能性もあるし、監督官庁による業務改善命令といったレベルの話を超えて、より厳しい動きが出てくればトーンも変わってくるのかもしれないが、筆者には、何となく、銀行の社会的ステータスや、地域経済に与える影響等に鑑みた“手心”のようなものが感じられて、気分が悪い。


別に自分とて、“鬼の首をとったような”糾弾報道を期待しているわけではないし、「業務改善命令が出される」というニュース自体が、当業種の会社にとっては(本来)相当重いものだから、これで十分、というべきなのかもしれないけれど、腑に落ちないものがどうしても残ってしまうのである。

*1:特に企業グループ内のM&Aや増減資などで子会社の資本が変動した時に、親会社への配当をどうするか、といったこと等は、気をつけないと危ういことになる・・・。

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