ダブル・トラック、ついに解消へ?

しばらく追いかけていない間に、具体的な立法がなされそうな段階にまで達していたらしい。

「政府は特許を巡る紛争の処理迅速化に向けた法改正の検討に入る。特許権の有効性に関し、裁判所と特許庁の判断が対立しかねない現行制度を改め、無駄な紛争の回避につなげる。知的財産戦略本部が6日に決定する2009年度から5年間の「第三期知的財産戦略の基本方針」で二重構造の問題点を明記。特許庁の無効審判制度の制限と、裁判所の判断への一本化を11年に予定する特許法抜本改正に盛り込みたい考えだ。」(日本経済新聞2009年4月5日付朝刊・第4面)

政権がいつ交代してもおかしくない現状では、「基本方針」に入れたところでそれが確実に遂行される保証はないのだが、それでも方針として明記される意義は大きい。


具体案として、これまで議論されているような、侵害訴訟確定後の再審事由の制限(侵害訴訟で請求が認容された後に特許が無効になったとしても、それをもって再審事由とはしない)や、無効審判の請求期間制限といった方策を立法化するにとどめるのか*1、それとももっと大胆に、これまでの特許庁の機能を裁判所に移植してしまうのか・・・・


司法府のリソース等を考えれば、現在の無効審判ルートの手続きをすべて裁判所でやってしまう、というのはあまりに無理がある話で、穏当に前者で落ち着かせるのがベターなのではないかと思うのであるが、はたしてどのような方向に向かっていくのか、今後の議論を注視する必要があるだろう。



なお、日経紙の中では、今回のダブルトラック解消が、あたかも「特許権を侵害されても、その後の無効審判を恐れ、提訴を尻込みしがち」な特許権者(おもに個人、中小企業を想定)を救済するものであるかのようなコメントもなされているのだが、無効審判を制限しても、侵害訴訟で特許無効と判断されてしまえば、実質的にその後の権利行使は不可能になるのだから、これで特許権者側が極端に有利になることは考えがたいように思う。


もちろん、侵害訴訟で訴えられる側も、「万が一負けても、後から無効審判でひっくり返すことは可能だ」という保険が使えなくなるから、その分、侵害訴訟での無効論の主張立証により力を入れないといけない、ということになるのだろうけど、それによって何かが決定的に変わる、ということにはならないのではなかろうか。


筆者としては、今後の議論がミスリードされないことを願うのみである。

*1:過去エントリーで引用した飯村判事のコメント等を参照のこと。http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20090112/1231803195

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