今週の日経の法務面では「外食、知財に悩む」というタイトルで、外食業界における看板・メニュー等の模倣問題が取り上げられている。(日本経済新聞2009年6月29日付朝刊・第19面)
「外食の「知的財産」の実情を探る」
という記事のコンセプトだけ見ると“おおーっ”と思ってしまうのだが、よく見ると、冒頭のペッパーランチの話を除けば、“ちょっと前の話”といった感が強い。
スターバックス対ドトールこーヒー(エクセシオール)の対決は、だいぶ前に落ち着いて、今はすっかり棲み分けが定着した感があるし*1、フジオフードシステム(まいどおおきに食堂)対ライフフーズ(めしや食堂)の対決も、本ブログで紹介したとおり、大阪地裁、高裁と原告側が連敗して、2年前に事実上の決着はついていた*2。
それ以降、そんなに目立つ紛争事例が生じているわけではないので*3、この種の特集になると上記のような事例が繰り返し使われるのはやむを得ないのかもしれないが、肌感覚として、“似ているのでは?”“○○のパクリでは?”と囁きたくなるようなショップが次から次へとあらわれている現状を鑑みると、ちょっと意外な気もする。
昔、トレード・ドレスに関して調べていたときに、海の向こうでは“Taco Cabana”の判決(今回の記事でも紹介されている)が1990年代前半に出ているのに、我が国でトレード・ドレス保護に関する議論が盛り上がっていないのはなぜだろう・・・?と業界通の知人に聞いたことがある。
その時の答えは、
「真似てナンボの業界に、そんな規制入れても混乱するだけだからでしょ。」
とそっけないものだったのだが、今になってみると確かに何となくわかるような気がして・・・。
店舗の雰囲気とか陳列方法だとか、といった表面的な部分を流行りのスタイルに合わせるのは当たり前で、真の勝負はそこから先の泥臭い部分*4で決まることが多いこの業界で、「知財」というツールがどれほどの意味を持つのか、ということは、一度冷静に考えてみる必要があるのかもしれない*5。
商標法改正に関する議論の際に言及される等、トレード・ドレスに関する議論が我が国でもようやく日の目を見そうな時期だからこそなおさら・・・である。
*1:自分は当然エクセシオール派である。
*2:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20070806/1186332281参照。なお日経の記事によると2008年5月に最高裁の上告不受理決定が出た模様である。
*3:サーティワンアイスクリームの事件なんかはあったが(http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20081111/1226880341)、そんなにメジャーな話題になったわけではない。
*4:ローコストで集客力のある立地を狙った出店攻勢だとか、巧みな値引き、クーポン作戦を使った宣伝展開だとか・・・。
*5:これは「外食」業界に限らず、通常の「小売・サービス」業界全般にあてはまる話ではないかと思う。