モバゲーをめぐる戦い

最近、携帯電話向け“モバゲー”のサイトが乱立していて、どれがどの会社のゲームなんだか、イマイチ区別が付かないなぁ・・・と漠然と思っていたら、案の定来た。

「交流サイト運営のグリーは25日にも、同業のディー・エヌ・エーDeNA)が著作権侵害行為を行っているなどとして東京地裁に提訴する。DeNAが携帯電話向けに提供している釣りゲームが、グリーの開発したゲームに酷似しているとして、提供の差し止めや損害賠償などを求める見通しだ。」
「グリーはトップ画面や釣り場の様子、魚を釣るまでの過程の構成などで、DeNA著作権法不正競争防止法を侵害しているとみている。」
「両社は数カ月前から交渉を続けてきたが、意見の一致が難しいと考え、グリーは訴訟に踏み切る。」
日本経済新聞2009年9月25日付朝刊・第13面)

両社のHPには、まだ正式なプレスリリースが掲載されていないようだが、「ITmedia News」には、9月25日付で、具体的なゲーム名や請求内容(損害賠償金3億8385万円!)まで伝える記事が掲載されており*1、ただの釣りネタではないのは確かだろう。


で、実際に侵害成否の心証を取るには、両方の会社のモバゲーサイトに登録して、両方のゲーム(釣り★スタ(グリー)、釣りゲータウン2(DeNA))をダウンロードして、1週間ばかし遊んでみる必要があるのかもしれないが、とてもそんな余裕はなさそうなので、直感で思いついたことを書いてみると・・・



おそらく、今回問題になっている両社のゲームは、「釣り」という現実のモデルに虚構のゲーム世界をいかに近づけるか、というのがコンセプトになっているものなのではないかと思う。


釣り場の描き方にしても、魚を釣り上げるまでのプロセスにしても、釣り上げた魚の描き方にしても、ゲーム性を失わせない範囲で、それをいかに現実に近づけるか、というのが、飽きられずに愛される商品に仕立て上げる上での最大のキモになっているはずだ*2


となれば、複数の会社で提供している同種のゲームが、少なからず似たような構成になってくるのは当然の話だし、似ているからといって、直ちに著作権侵害や不競法違反が成立する、というものでもない、ということになろう。


そもそも携帯ゲームの場合、操作方法ひとつとっても、通常のゲーム機以上に大きな制約がかかるわけだし、電車の中で軽くできるようなオーソドックスなゲームに仕立て上げようと思えば、どうしても似たようなものになってきてしまうのではないだろうか。


携帯サイト業界で双璧をなす両社のことだから、一方が先に出しているゲームを、もう一方の方が全く参考にせずに同種の商品を開発する、なんてことは考え難いのであって、「依拠」性そのものを否定することは困難だろう*3


だが、著作権法の世界は「依拠」すれば直ちに侵害成立、となるほど単純なものではないし、どのような形で保護を求めるにしても、原告の「釣りゲーム(の画面なり構成なり)」に、単なる現実のモデルを超えた創作性なり、商品等表示性なり(不競法2条1項1号、2号の場合)がなければ、救済を受けるには至らない。


そして、おそらく、釣りゲームを提供している会社は、この2社以外にもあるのだろうから、グリーとDeNAのゲームの類似性を検討する上では、これら2社以外が提供しているゲームとの比較、というフィルターもくぐり抜けなければならないことになるだろう。



・・・というわけで、考えれば考えるほど、原告勝訴への道のりは長く険しいもののように思えてしまうのだが、実際のところどうなのか。


グリーとしては、ライバルメーカーに対して一定の牽制ができれば、それで目的は達成した、という考え方もとりうるから、意外にあっさりと引きさがることもあるのかもしれないし、逆に、「青少年健全育成云々」の観点からいろいろと叩かれやすい業界のこと、被告側の方で、「ことが大きくなる前に」と、さっさと和解でカタを付ける方に動いてしまうこともあるのかもしれない。


いずれにせよ、新しい商売が世の中に登場して、脚光を浴びるようになってくると必ず勃発するのがこの手の紛争だけに、ここは“モバゲー”の“侵害訴訟業界デビュー”を祝いつつ、今後の行く末を見守ることにしたい。

*1:http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0909/25/news042.html

*2:この点において、一からオリジナルでストーリーを作り上げなければいけないタイプの商品(RPGなど)とは大きく異なる。

*3:それを否定したら、かえって被告側にやましいところがあるのではないかと勘ぐられることになろう。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html