テレビ用ブラウン管をめぐって、国際的な価格カルテルを結んだとして、公取委がパナソニックの関係会社らに対し、排除措置命令及び課徴金納付命令を出した。
公取委のプレスリリース(http://www.jftc.go.jp/pressrelease/09.october/09100703.pdf)によると、違反行為の概要は、
「別表記載の11社は,我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が現地製造子会社等に購入させるテレビ用ブラウン管(以下「特定ブラウン管」という。)について,遅くとも平成15年5月22日ころまでに,2か月に1回程度,CPTミーティングを継続的に開催し,おおむね四半期ごとに次の四半期におけるその現地製造子会社等向け販売価格の各社が遵守すべき最低目標価格等を設定する旨を合意することにより,公共の利益に反して,特定ブラウン管の販売分野における競争を実質的に制限していた。」
というものであり、納付を命じた課徴金額は、パナソニック関係3社が計約17億9700万円、サムスン系の関係会社が約13億7300万円、となっている*1。
パナソニック系関連会社について言えば、課徴金納付命令の名宛人となっている東南アジアの関係3社は既に消滅しているし*2、そもそもパナソニックグループ自体が、先日ブラウン管事業からの完全撤退を発表したばかり。
何とも間が悪い話で気の毒だなぁ・・・と思って、同社のホームページを覗いてみたら、何とも美しいプレスリリースに出会った。
「テレビ用ブラウン管に関する公正取引委員会からの排除措置命令等について」と題したプレスリリース(http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn091007-1/jn091007-1.html)。
「パナソニック株式会社の子会社であるMT映像ディスプレイ株式会社は、本日、公正取引委員会から排除措置命令を受けました。また、MT映像ディスプレイ株式会社の海外製造販売子会社であるピーティー・エムティー・ピクチャー・ディスプレイ・インドネシア(以下、MT映像ディスプレイ インドネシア株式会社)、エムティー・ピクチャー・ディスプレイ(タイランド)・カンパニー・リミテッド(以下、MT映像ディスプレイ タイ株式会社)、エムティー・ピクチャー・ディスプレイ(マレーシア)・エスディーエヌ・ビーエイチディー(以下、MT映像ディスプレイ マレーシア株式会社)は、それぞれ課徴金納付命令を受けました。」
という書き出しに続く、
「これらの命令を受けたという事実については、これを厳粛かつ真摯に受け止め、法令順守のより一層の徹底に努めてまいります。」(強調筆者)
という何とも曰くありげなフレーズ。
そして、排除措置命令、課徴金納付命令の内容を淡々と伝えた後に続く、「今後の対応」という項目に書かれたコメントが奮っている。
「MT映像ディスプレイ株式会社はブラウン管事業からの撤退を決定しておりますが、今回の排除措置命令および課徴金納付命令に関する公正取引委員会の判断については、これまでの独占禁止法の考え方並びに運用と異なる点もあることから、今後、審判請求も視野に入れて慎重に対応を検討してまいります。」(強調筆者)
東南アジアの子会社同士の取引に我が国の独禁法が適用されていることや、違反行為認定の曖昧さ、課徴金算定方法など、審判請求をして争いたいところは山ほどあるが、既に撤退を発表した事業に関して、いくら争ったところで、得られるものは乏しく、むしろコストの方が重くのしかかるだけ・・・。
そんな悩ましさを感じさせながらも、短い文面の中に「あっさりとは引き下がらんぞ」的な“守るべきところは守る”ニュアンスをしっかりと織り込んでいるこのリリースには学ぶべきところが多いように思う。
いろいろと論点が多い事案のように思えるだけに、個人的には、審判できっちり争って、白黒はっきりさせて欲しいものだと思うところであるが、さてどうなることだろう・・・。