エキサイティングな政策方針を矢継ぎ早に打ち出してはどん詰まっている感のある鳩山政権だが、トップダウン型の進め方にも良いところがあるのかなぁ・・・? と思わせてくれるのが、日経紙1面に掲載された↓の観測記事。
「政府は企業が公正取引委員会の行政処分に異議を申し立てる「審判制度」を廃止する方針を固めた。公取委が自ら下した処分の是非を審査するのは公平性を欠くと判断した。審判機能は裁判所に移管する。公取委が違法行為の有無を調査する際に、企業が選んだ弁護士の立ち会いを認める制度も導入する。早ければ来年の通常国会にも独占禁止法改正案を提出する方針だ。」(日本経済新聞2009年11月5日付朝刊・第1面)
これまで公取委の勇み足的暴走に苦しめられてきた多くの企業にとっては、これはとても嬉しいニュースだろう。
審判制度の廃止は、経済界のここ数年の“悲願”とも言える大テーマだし、「弁護士立ち会い」は、通常の刑事手続でも認められていない画期的な制度だ。
前者の方は、実質的証拠法則まで含めて撤廃しないと実効性は上がりにくいだろうし、それ以上に一定の「処分」が下された時点で対象企業を犯罪者扱いしてしまうメディアの報道姿勢を何とかしないことには問題は根本的には改善されないと思うのだが*1、それでも一審級を取り戻せる意義は決して小さくない。
後者に至っては、「本当にできるのか?」という思いもあるし、きちんとした弁護士を付けないと、かえって調査資料の信用性の担保に貢献してしまうだけの話になってしまうような気もするのだが*2、もし実現すれば、実に大きな一歩である。
それにしても、経団連が最新の意見書を出したのは先月の20日のこと*3。
それからわずか2週間程度で、上記要望書の内容をほぼ丸のみしたような改正方針が伝えられるのだから、何とも驚かされる*4。
元々政治色の薄いマターで、当局(役人)と一部の御用学者を除けば、筋論的にも進むべき方向が大方見えている話だけに、この先トントンと話が進む可能性もあるが、そもそも来年の春、政権がどうなっているのかさえ分からないような状況だけに、今は半信半疑。
あまり期待しないで待つことにしよう。
*1:公取委の不当な排除措置命令や課徴金命令で被る「実損害」よりも、“悪いことをした会社“というレッテルを張られることによる信用棄損の方が、遥かに大きいのだから。
*2:事実関係を会社が把握できていない初期段階で、形だけ弁護士を付けて公取委ペースで淡々と調査が進んでしまったような場合に、後から会社が適切な防御戦略を取ることは困難だろう。
*3:http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2009/086.html
*4:内容自体は07年の意見書ともそんなに変わっていないので、以前から党内で問題意識を持っていた人であれば、すぐに対応できる状況ではあったのかもしれないが