東証の対応から垣間見えるもの。

先日、東京地裁で第一審判決が出た、「みずほ証券誤発注問題」。


本ブログでも取り上げたように、判決の内容自体は証券会社に随分と“優しい”中身のように思われるものだった*1から、控訴するとしたら被告(東証)の側だろう、と漠然と思っていた。


ところが、その後の動きは全く正反対。


被告(東京証券取引所)の側で、期限前に早々と控訴見送りを発表する一方で、みずほ証券側はあくまで東京高裁に請求の全部認容を求めて控訴する、という展開になってしまった。


確かに、例の誤発注から既に4年が経過していることや、その間に取引所規則の整備等が行われたことで、事件の再発防止策や再発時のリスク分担方法についてもある程度のルールが確立されており、「みずほ証券誤発注問題」は“過去の話“に過ぎなくなっている、といったことを鑑みれば、東証の判断も全く理解できないものではない。


また、先に控訴見送りを表明したのも、あえて控訴しない方針を示すことで「みずほ証券側にプレッシャーをかける」という戦術的な意味合いが大きかったのではないか? と善解することが可能である。


だが、みずほ証券控訴の方針が公表された翌日の新聞に載った、↓の記事を見た時は、さすがに目を疑った。

みずほ証券が2005年にジェイコム(現ジェイコムホールディングス)株を誤発注した問題を巡る訴訟で、東京証券取引所が18日までに同証券に対して賠償金を支払っていたことがわかった。賠償金約107億円に係争中の金利分(5〜6%)を加えた約132億円を支払った。」(日本経済新聞2009年12月20日付朝刊・第3面)

記事には、

民事訴訟では金利支払い負担の増加や強制執行を避けるため、控訴する場合もいったん賠償金を支払うのが一般的だという。」

というフォローも入っているが、いくら仮執行宣言が入っている、といっても*2、“大人同士の喧嘩”で勝った側が現実に仮執行をかけることは考えにくい。


この低金利時代に、年5〜6分の金利負担を負わされるのはたまらない*3というのは、ある程度理解できる理由だが、控訴審で請求棄却、あるいは賠償額減額に持ち込める可能性は十分にあるこの訴訟で、控訴期限前に認容賠償額を全額支払うほど弱気になる必要があったのかどうか。



こういう一連の動きを見てくると、どうも東証側に、

「“裁判沙汰”を起こすこと自体がそもそも不名誉で、勝つにしても負けるにしても、さっさとこんなものは終わらせてしまいたい。」

というマインドが強く根付いているように、自分には思えてならない。


これが“古き良き企業文化”なのだ、と言ってしまえば簡単だが、今や司法を活用することに以前ほど抵抗がなくなってきているように見える金融・証券業界の事業者を相手に、“監督する立場”の取引所がこんな弱腰では、足許を見られても仕方ないだろう。


高裁での第2ラウンドがどのような展開になるのかは神のみぞ知ることであるが、どうせやるからには双方ともきちんと筋を通す形で訴訟を進めてほしいものだと思う。


今回のような問題は、決して証券取引所だけで発生する類の問題ではないのだから・・・。

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