「iPad」商標問題

「問題」といった大仰なタイトルを付けるほどの話なのかどうかは分からないが、米アップル社が「iPad」の発売を発表して間もないこの時期に、もう商標の話題が出ている。

「米アップルが27日発表した携帯情報端末iPadアイパッド)」と同じ商品名を富士通など複数の企業が商標の登録や申請をしていることが分かった。今後、アップルと関係する企業間で協議に入るとみられる。」(日本経済新聞2010年1月30日付朝刊・第11面)

確かに、以前米アップル社が「iPhone」を世に出した際には、我が国で先んじて登録されていた「アイホン」社の商標と競合して、ちょっとした話題になった(http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20080325/1206488211)。


なので、日経紙としては、今回も先んじて報道したつもりだったのだろうが、今回は少なくとも日本国内ではそんなに大きな問題は起きそうにない。


というのも、現在日本国内で登録されている「iPad」(アイパッド)類似の商標は、

「i‐Pad/アイパッド
登録第4972803号 平成18年7月28日登録
株式会社ワコール
第25類 
洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類,げた,草履類,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴

「i-パッド/アイパッド
登録第5228329号 平成21年5月1日登録
株式会社ワコール
第25類
被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴

「iPAD」
国際登録885058号
平成18年3月20日国際登録
平成19年11月30日国内登録
Siemens Aktiengesellschaft
【類似群】09B01 09F02 11A01
第7類
Engines (not for land vehicles), servo mortors and other electric mortors (not for land vehicles),gears (not for land vehicles).
第9類
Electric drives containing a motor.
(和訳)
第7類
エンジン(陸上の乗物用のものを除く。),サーボモーター及び他の電気モーター(陸上の乗物用のものを除く。),ギヤ(陸上の乗物用のものを除く。)
第9類
原動機を含む電気式駆動装置

くらいで*1、このうち、ワコールの2つの商標はアップル社の商品とは指定商品が大きく異なる。


また、Siemens社の商標は、一見第9類を指定商品としているのでアップル製品とかぶりそうだが、その内訳は専ら重電系の機器だし、「スレートコンピューティング(ユーエスエー)リミテッドライアビリティカンパニー」名義で出願されているアップルの「iPad」商標(商願2009-58254、平成21年7月31日出願)*2の指定商品↓

【類似群】 09G53 10B01 11A02 11B01 11C01 24A01 24B01 24B02 24C01 24D01 24E01 26A01 26D01
第9類
コンピュータ,コンピュータソフトウェア,コンピュータゲームソフトウェア,携帯電話機用のプログラム,携帯電話機用ゲームプログラム,プリンタ,コンピュータ用モニタ,コンピュータ用マウス,コンピュータ用スピーカー,コンピュータ周辺機器,コンピュータ用ディスクドライブ,コンピュータ用リモートコントローラー,コンピュータハードドライブ,コンピュータメモリーボード,コンピュータ用キーボード,コンピュータサーバ,テレビジョン用セットトップボックス,スキャナー,タッチスクリーン,トラックボールトラックパッドライトペン,パーソナルコンピュータ用のジョイスティック,コンピュータ用ゲームコントローラ,グラフィックスタブレットデジタイザーフラッシュメモリ,携帯電話・デジタルオーディオビデオプレーヤー・手持ちコンピュータ・電子手帳・計算機・カメラの機能を有する電子メールその他のデジタルデータの送受信用及びインターネット接続用の携帯情報端末携帯情報端末装置,半導体素子,集積回路,未記録の記録媒体,フォントを記憶させた記憶媒体,コンピュータソフトウェア上に記録されたタイプフェイスフォント,電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具用リモートコントローラー,ビデオカメラ,スピーカー,携帯電話,テレビ電話,電話,ビデオプロジェクター,ラジオ受信機,マイクロホン,ヘッドホン,イヤホン,チューナー,モデム,ルーター,コンピュータネットワーク用の接続ハブ,ファクシミリ機,ビデオレコーダー,テレビジョン受信機,ステレオ,デジタルオーディオプレーヤー,デジタルビデオプレーヤー,GPSを利用したナビゲーション装置,全地球測位システム(GPS)受信機,全地球測位装置(GPS)及びその部品,ビデオディスクプレーヤー,オーディオディスクプレーヤー,アンプリファイヤー,デジタルカメラ,カーオーディオ機器,電気通信機械器具,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,家庭用テレビゲームおもちゃ用ジョイスティック,家庭用テレビゲームおもちゃ用ゲームコントローラ,家庭用テレビゲームおもちゃ用ソフトウェア,家庭用テレビゲームおもちゃ,レコード,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD−ROM,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物
第28類
遊園地用機械器具(業務用テレビゲーム機を除く。),電子楽器おもちゃ,携帯用ビデオゲームおもちゃ並びにその部品及び附属品,電子ゲームおもちゃ(テレビジョン受像機専用のものを除く。),リモートコントロール式模型おもちゃ,おもちゃの携帯電話,おもちゃ電話,おもちゃのコンピュータ,電子おもちゃ,電子携帯用ゲーム,その他のおもちゃ,人形,囲碁用具,歌がるた,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,運動用具,釣り具

と比べても、類似群において重複していないことが分かる。


したがって、このまま行けば、アップルの「iPad」商標はさして問題になることなく登録され、今後の商標使用においても、日本国内で大きな紛争が生じることはない、という予測ができるところである*3


単なる電子機器・電気機器の範疇を超えて、より幅広い用途で生活に浸透していくことが予想される機器だけに、押さえておく区分は上記のレベルで足りるのか等々、今後いろいろ問題は出てくる可能性はあるだろうが*4、「アイホン」の時のような面白い話題になることは、ちょっと期待薄かな、と思った次第。


(追記)
米国で現在、出願・登録されている商標のうち、アップル社の商標が引っかかる可能性があるのは以下の2つ。うち1つ(76497338号)は今日本で話題になっている富士通子会社のものなのだが、既に登録されている「MAG-TEK」社のものも結構嫌らしいような気がする・・・。

Word Mark IPAD
Goods and Services IC 009. US 021 023 026 036 038. G & S: KEYPADS FOR ENTRY OF PERSONAL IDENTIFICATION NUMBERS IN E-COMMERCE. FIRST USE: 20071220. FIRST USE IN COMMERCE: 20071220
Mark Drawing Code (1) TYPED DRAWING
Trademark Search Facility Classification Code LETS-1 I A single letter, multiples of a single letter or in combination with a design
Serial Number 76162761
Filing Date November 10, 2000
Current Filing Basis 1A
Original Filing Basis 1B
Published for Opposition October 12, 2004
Registration Number 3405828
Registration Date April 1, 2008
Owner (REGISTRANT) MAG-TEK, INC. CORPORATION CALIFORNIA 20725 South Annalee Avenue Carson CALIFORNIA 90746
Attorney of Record Lauren E. Schneider
Type of Mark TRADEMARK
Register PRINCIPAL
Live/Dead Indicator LIVE

Word Mark IPAD
Goods and Services IC 009. US 021 023 026 036 038. G & S: HAND-HELD COMPUTING DEVICE FOR WIRELESS NETWORKING IN A RETAIL ENVIRONMENT. FIRST USE: 20020108. FIRST USE IN COMMERCE: 20020113
Mark Drawing Code (1) TYPED DRAWING
Serial Number 76497338
Filing Date March 7, 2003
Current Filing Basis 1A
Original Filing Basis 1A
Published for Opposition September 1, 2009
Owner (APPLICANT) Fujitsu Transaction Solutions Inc. CORPORATION DELAWARE 5429 LBJ Freeway Dallas TEXAS 75240
Attorney of Record EDWARD A PENNINGTON
Type of Mark TRADEMARK
Register PRINCIPAL
Live/Dead Indicator LIVE

*1:あくまでIPDLで自分が調査したレベルなので、どこまで信頼するかは読者の皆様にお任せする。

*2:この出願名義人がアップルとイコールなのかどうか公式には明らかにされていないようだが、出願時の代理人がアップル本体と同じであることなどからして、同一と考えて問題はないだろうと思う。

*3:なお、日経紙の報道では「富士通米子会社が流通業の在庫管理などに使う携帯情報端末の商標として「iPAD」を米国で登録申請して販売している」ことが伝えられているが、富士通系の商標が日本国内で出願登録されている形跡はないので、こと日本国内に限って言えばこれが問題になることはないと思う。なお、米国商標を検索したところ現在生きている(出願中ないし登録中で権利放棄されていないもの)「iPAD」商標は7件。うち、「IP Application Development LLC LIMITED LIABILITY COMPANY」名義で2010年1月16日に出願された商標(77913563号)が、アップル社製品が関係しそうな幅広い区分を万遍なく押さえていて一見“本家”のものっぽい(優先権主張の日付も2009年7月16日で、我が国に出願されたスレート社の商標と一致している)。

*4:実際、米国で出願されている前記77913563号では、通信に関する第38類などより幅広い区分がカバーされている。