無意味な反発はしなくていい。

たぶん、まだアドバルーンの段階だとは思うが、株主総会絡みの仕事をやっている人間にとっては“画期的”ともいえる金融庁の方針が、日経紙の1面に掲載されている*1

金融庁は2010年3月期から、上場企業などの情報開示を強化する方針だ。現在は有価証券報告書で任意に公表している役員報酬について、総額と役員ごとの金額を記載するよう義務づける。」

役員報酬の個別開示」というのは、株主が元気な(苦笑)会社では毎年のように「株主提案」で挙げられる議案だし、毎年のようにシャンシャンと否決される議案でもある。


法務的視点からチェックを入れる側としては、わざわざ開示を求める積極的な理由がイマイチ分からない一方で*2、それをかたくなに拒む理由ももっと理解できない*3


上への忠誠心が強い、総務とか人事の人々はあれこれ理屈をこねたりもするのだが、本音を詰めていくと、

「他の会社がどこもやってないのに、自分のとこだけ突出してやるのはちょっと気が引ける」

という点に尽きてしまうのであって、積極的に開示を拒む理由なんぞ、元々どこにもないのである。


前記記事のとおり、金融庁によって記載が義務付けられることになれば、“株主が元気な会社”でも、株主提案に対する数行の「意見」の文面を考えるための無駄な会議の時間を多少は節約できることになるし、招集通知もほんの少しだけ薄くできるかもしれない。


日経の記事には、

「企業の反発は根強く、流動的な要素も残る」

というお決まりのフレーズがくっついているのだが、同時に「情報開示強化策」の中に挙げられている他の2つ(議決結果の公表と株式持ち合い状況の公表)はともかく*4、「役員報酬の開示」については、さっさと義務付けして、不毛な議論が生まれる余地を消してほしいものだ、と、自分は思う。

*1:去年の秋くらいにも報じられた内容のようだが、株主総会シーズンを目前に控えた時期の“再登場”だけに、よりきな臭さを感じる。

*2:取締役の報酬限度額は株主総会の議決事項として公開されているのだし、通常の大会社であれば特定の取締役に報酬が集中することも常識的には考えにくいのだから、あえて取締役ごとに個別に開示を求める必要はなかろう、と思う。

*3:昔はよく「社長の報酬がこんなに安いというのが白日の下に晒されてしまうと、幹部候補社員の向上心が損なわれる」なんてことも良く言われていたが、そんなことは幹部社員の庶民的なカツカツの暮らしぶりを見ていれば容易にわかることで(笑)、あえて隠すことでもない。これから会社に入ろうとする人に対しては、多少なりとも影響があるかもしれないが・・・。

*4:「議決結果の公表」に関しては、どこまで正確に票を数える必要があるのか(特に総会当日に会場に来ている株主の賛否をどこまできっちりとカウントする必要があるのか)が問題になる(通常の会社の通常の議案であれば、圧倒的多数の議決権が事前に行使されるため、会場にいる株主の議決権が結果に影響を与えることなど皆無に等しい。にもかかわらず、会場の株主の議決権の数まできっちりと数えなければならないということになると、事務的に煩雑なこと甚だしい)。また、「持ち合い状況の公表」についても、事務的煩雑さの観点から、積極的には賛意を示しにくいところだ(面倒なら持ち合い株式など全部売り払ってしまえばよい、という発想も理解できなくはないのだが)。

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