絶好の展開。

男子の時以上に、オフィスでのワンセグ視聴率が高くなったような気がする、女子フィギュア・ショートプログラム


結果だけ見れば、「北米大陸の西海岸」という地の利を生かす形で、アメリカ、カナダ勢と東アジア勢が最終グループを独占する形になってしまったが*1、7位から12位までのグループに入った選手の中にも、今シーズンのベストに近いキレを見せていた選手は結構いて*2、フリーはさらに面白くなるんじゃないかと思う*3


浅田真央選手のほぼ完ぺきな演技の直後に、SP歴代最高得点(78.50点)を叩き出したキム・ヨナ選手が凄いのは間違いないし、今シーズンのこれまでの公式戦スコアを見る限り、追う者と追われる者との間の4.72点という差が決して小さいものではないのも事実だ。


だが、圧倒的なインパクトと完成度の高さを誇る「007」と比べると、今季のキム・ヨナ選手のフリーにはイマイチ感が拭えないし*4、東京での世界選手権の例を引くまでもなく、追われる立場になった時の彼女は決して強くはない。


韓国国内の期待を一身に集め、五輪独特の緊張感の中、安藤選手と浅田選手に挟まれて滑る、という状況に置かれれば、なおさら・・・ということもありうるわけで、あの「007」で、5点以上離されずにSPを終えることができた、というのは浅田選手にとっては非常に大きかったのではなかろうか。



ちなみに、キム・ヨナ選手と浅田真央選手のSPのスコアを比較すると、↓のようになる。

(左の数字はキム・ヨナ選手のスコア、右の数字は浅田真央選手のそれ)
◆コンビネーションジャンプ*5 12.00点(10.00+2.00)/10.10点(9.50+0.60)→キムヨナ+1.9点
◆3フリップ 6.70点(5.50+1.20)/5.70点(5.50+0.20)→キムヨナ+1.0点
◆レイバックスピン 3.50点(2.70+0.80)/3.40点(2.70+0.70)→キムヨナ+0.1点
◆スパイラルシークエンス 5.40点(3.40+2.00)/5.40点(3.40+2.00)→同点
◆2アクセル 5.10点(3.50+1.60)/5.10点(3.50+1.60)→同点
◆フライングシットスピン 3.50点(3.00+0.50)/3.50(3.00+0.50)→同点
ストレートラインステップ 4.00点(3.30+0.70)/4.30点(3.30+1.00)→浅田+0.3点
◆コンビネーションスピン 4.50点(3.50+1.00)/4.00点(3.50+0.50)→キムヨナ+0.5点
◇ Totals Executed Elements 44.70点 /41.50点→キムヨナ+3.2点

◆振付け・構成 8.40点/8.10点→キムヨナ+0.3点
◆つなぎ 7.90点/7.40点 →キムヨナ+0.5点
◆音楽の解釈 8.75点/8.20点 →キムヨナ+0.55点
◆演技力 8.60点/8.40点 →キムヨナ+0.2点
◆スケーティング技術 8.60点/8.25点 →キムヨナ+0.35点
◇ Factored Program Components 33.80点/32.28点 →キムヨナ+1.52点

最初のコンビネーションジャンプは、キム・ヨナ選手にとってはウルトラマンスペシウム光線みたいなものだから(苦笑)、そこでリードを許すのは仕方ないとしても、それ以外の要素でここまで点差が開くものかいな・・・、というのが率直な感想*6


でも、採点競技である以上、多少の有利不利は仕方がないことだし、“コンマいくつ”の差でフリーを迎えるよりも、これっくらいの差があった方が、雑念を振っ切って自分の演技に専念するにはむしろいい状況なのではないだろうか*7


おそらく、キム・ヨナ選手のSPの驚異的スコアを見た時、ワンセグで競技進行を見守っていた日本人のほとんどは携帯電話を閉じ、「これで金メダルはなくなったな」という絶望を感じながら仕事に戻ったことだろう。


だが、上位3強対決に煽られない滑走順をキープした安藤美姫選手、最終グループに比べれば比較的プレッシャーのかからないポジションで思う存分自分の世界を表現する機会を与えられた鈴木明子選手と合わせ、自分はあえて、浅田真央選手にとっても、この展開こそが「絶好の展開」だ、と思いたい。


キム・ヨナ選手がこのまま逃げ切って勝つようなら、潔く、今回の五輪はキム・ヨナの五輪だった*8、と総括するだけの話。


今は、バンクーバーで奇跡の鐘が鳴ることを信じよう。

*1:ロシェット選手が今季一番の出来だったのは確かだとしても、Elementsで8点近く加点された上に、要素によっては浅田真央選手を上回るレベルのProgram Componentsスコアになってしまったのはどうかと思うし、レイチェル・フラット選手はともかく長洲未来選手までが最終グループに残るとは、幾ら“事実上地元”でも・・・という気はする。

*2:鈴木選手以外の欧州勢、特にレオノワ選手とゲデバニシビリ選手の冴え具合には特筆すべきものがあった。

*3:29.68点を叩き出したコストナー選手を筆頭に、演技構成点で稼げる選手が揃っているのも第3グループの特徴で、4位の安藤美姫選手から11位の鈴木明子選手までが4点差以内にひしめいている状況を考えると、あっと驚くような順位変動もあるんじゃないかと思う。

*4:最悪の出来だったスケートアメリカのFSでは、レイチェル・フラット選手にさえ4.41点差を付けられた。もちろんエリック・ボンパール杯で133.95点という驚異的な数字を叩き出していたりもするから、完璧に滑られてしまうと、逆転するのがかなり難しくなるのは確かなのだが。

*5:キム・ヨナ選手は3ルッツ+3トゥーループ、浅田真央選手は3アクセル+2トゥーループ。

*6:浅田選手の最後のスピンは、曲に合わせようとした分ちょっと甘くなった印象はあったが、それでも0.5点差が付くほどの開きはないような気が。演技構成点の方も、振り付け以外の部分でこんなに差が付くのはちょっとどうかな、と思う。

*7:フリーの滑走順がキム・ヨナ選手の直後になっただけになおさら。

*8:というか、スピードスケートでの大躍進等々、韓国勢が大躍進した五輪だった

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