「1票の格差」訴訟をめぐる2つの流れ。

先の09年8月衆院選における「1票の格差」をめぐっては、既に大阪高裁、広島高裁と立て続けに違憲判決が出されていたところであったが*1、今回、東京高裁でも「格差」が「違憲状態にある」との判断が下されたようである*2


地方の高裁ならともかく、東京高裁ともなれば思い切った判断は出しにくいだろう・・・と、思っていたところだけに、

(1人別枠方式は)「最大格差が2倍以上となる不平等を許容するに足りるだけの合理性は乏しい」
「09年の選挙当時、投票価値の不平等は違憲状態に至っていた」
日本経済新聞2010年2月25日付朝刊・第42面より)

という判断を東京高裁(富越和厚裁判長)が下した、という現実を、自分はちょっとした驚きをもって見つめている。


もっとも、この判決、大阪、広島の両高裁の判決とは違って、

「1994年の小選挙区比例代表並立制導入後、最大格差2倍超の衆院選について最高裁がすべて合憲としたことや、選挙制度の改正には相応の時間がかかることなどを挙げ「国会が合理的期間内に是正しなかったとまではいえない」と判断した」(同上)

そうであり、立法不作為の違憲性までは認めなかったとのこと。


2005年の衆院選に関する平成19年の最高裁判決に比べれば*3、それでも前進はしていると言えるのだが、これまでの流れと見比べると、ちょっと後退した感があることは否めない。


で、気になるのは、今回の訴訟を仕切っていたのが、大阪、広島の両高裁で華々しい成果を挙げた「一人一票実現国民会議」系のグループではなく、従来の「一票の格差訴訟」を仕切っていた弁護士グループだった、ということである。


代理人が異なれば訴訟上の主張・立証戦術も多少は変わってくるだろうし、それに合わせて書面の書き方なども大きく変わってくる、というのは容易に想像が付くところ。


大阪・広島高裁と、今回の東京高裁の判決の違いが、裁判所ないし係属部の裁判官のスタンスの違いによって生じているものなのか、それとも当事者の主張立証の微妙な違いによって生じているものなのか、本当のところは分からないが、今後の同種訴訟の行方と合わせていろいろと気になるところではある*4

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20091228/1262104973

*2:2010年2月24日付の各紙夕刊等で報じられている。

*3:格差そのものが違憲とはいえない、とした。

*4:なお、「国民会議」系の訴えは、全国7高裁・1高裁支部で提起されている、ということだから、東京高裁で次に下される判断を見れば一応の結論は出せるかもしれない。

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