ここ数年まとまった業界横断的なデータを見かける機会が少なかった(ような気がする)特許の「使用料(実施料)率」について、特許庁が久々に調査結果を公表するようだ。
「企業が自社の特許使用を許可する際に、製品売上高をベースに請求する「特許使用料率」を業界ごとにみると、最も高いのは食品の5.5%、次いで化学の5.3%であることが分かった。健康志向を受け、食品業界では製品の付加価値を高める原料・素材の成分特許が高く取引されるようになったためだ。」(日本経済新聞2010年4月10日付朝刊・第13面)
対象は「合計出願件数の上位約3000社」、有効回答は563件というこの調査。
「化学」が高めの数字になって、「一般機械」や「電気」が低めに出る、というのは予想通りなのだが、上の記事にもあるように、「食品」がトップの数字になっている、というのは結構意外だった。
開発そのものがハイリスクハイリターンで、分野ごとの会社間の優劣がはっきりしている業界では、得てして実施料率が高くなりがちなのだが*1、今の食品業界はまさにそんな感じなのだろうか。
個人的な印象では、現在行われている特許ライセンス取引の実態がこの調査にすべて反映されているようには思えないし、取引の実態を明らかにするためには、よりきめ細やかな調査が必要になってくると思う。
もっとも、交渉にちょっとでも有利な材料があれば使いたいのが実務サイドの率直な心情だけに、今後しばらくは今回出てくるデータが、交渉の場でちょこちょこ顔を出すこともあるのかなぁ・・・なんて思ったりもする。
発明協会が、早く本にして公刊してくれるのをとりあえず待つことにしようかと。
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*1:どの会社も同じような方向性で開発を進めていて、結果として、どの会社も持っている特許の優劣に大した差がなくなってしまう業界だと、最終的に「束」ごとのクロスライセンスが行われることによって、特許実施にかかるコストが限りなくゼロに近づいていくのだが、特許が特定の会社に偏在している場合はそうもいかない。