検察の大誤算

このところ、何かと話題になることが多い、障害者団体向け郵便料金割引制度の悪用事件。


虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われていた元厚生労働省局長・村木厚子被告の公判では、被告人が一貫して全面否認を貫いたあげく、出廷した証人もことごとく被告人の関与を否定し、検察官が最後の一手として証拠調べ請求した供述調書まで、裁判所に証拠採用を却下されるという事態に陥った。

「横田(信之)裁判長は、制度利用に必要な証明書発行に絡み、元局長の指示を受けたとされる元同省係長、上村勉被告(40)の供述調書について「検事が想定する内容になるよう作られた可能性が排除できない」と指摘。検察側が証拠調べを求めた計15通すべてについて請求を却下した。そのうえで検察官の取り調べについて「問題があったと言わざるを得ない」などと批判した。さらに裁判長は、元局長に証明書発行を依頼したとされる自称障害者団体「凛(りん)の会」設立者、倉沢邦夫被告(74)=一審は虚偽有印公文書作成罪などは無罪、郵便法違反罪は有罪、検察側控訴=の供述調書全6通の証拠請求も「検事の誘導があった」として却下。証拠採用を認めたのは、検察側が請求した同省関係者や団体関係者ら計8人の供述調書計43通のうち、5人分計9通にとどまった。」(日本経済新聞2010年5月27日付朝刊・第39面)

自らは証明書を偽造したことを認めている元係長が、「上司は関与していない」と明確に法廷で証言した意味はやはり大きいのであって*1、特信状況を認めることなく調書採用を却下した判断は全面的に正しい、と言わざるを得ないだろう*2


そして、機密性の高い官僚組織内部での文書作成が問題になっている事件で、実際に偽造文書を作成して決裁を受けた担当官の証言なしに決裁官の関与を立証するのは事実上不可能と言わざるを得ないから、この時点で公判審理の大勢は決したといえる。


仮にこのまま無罪判決が出て確定した場合に被告人の名誉をどのように回復していくべきなのか、さらに検察当局でどのような“腹の切り方”を考えるべきなのか、いろいろと波及していきそうな問題は多いのであるが、まずはこの先の論告・弁論から判決までの動きに注目していきたいと思う。

*1:ヤクザ組織でもなければ、こういう場面で、部下が上司をかばってあえて事実に反する証言をする必要性は乏しい。

*2:これまでそのような運用がなされていたかどうかはともかく。

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