勇敢な戦いの末に。

採用内々定取消が社会問題化したのは、“リーマン・ショック”等の影響で、就活戦線が一気に暗転した08-09年だったと思うが、そんな状況の真っただ中で内々定を取り消した会社を訴えた勇敢な学生たちが、一つの大きな成果を勝ち取った。

「景気悪化などを理由に採用の内々定を取り消したのは違法として、元大学生の20代の男女2人が福岡市の不動産会社に対し計495万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福岡地裁(岩木宰裁判長)は2日、「(採用への)学生の期待を不当に侵害した」として、同社に慰謝料など計195万円の支払いを命じた。」(日本経済新聞2010年6月3日付朝刊・第38面)

当ブログで彼らが労働審判を申し立てる、というニュースを紹介したのは、ちょうど1年5カ月ほど前のこと*1


結局、労働審判で、解決金計175万円の支払いを命じられた不動産会社(コーセーアールイー)が、異議を申し立てて民事訴訟に移行する形になったのだが、ここでも上記のとおり、賠償額が増額されて原告一部勝訴の判決が下されることになった。


上記リンク先の記事にもあるとおり、1年5カ月ほど前の自分の感触は、

内々定段階で労働契約の成立を認めるのは無理」
「学生側の期待権保護といった観点からの損害賠償請求も裁判所に認めさせるのは難しい」
「ゆえに少額の解決金での決着ということにならざるを得ないのではないか」

というものだったのだが、現実には、「労働契約は成立しない」という判断がなされたものの、裁判所は、

「一方で「内々定を得た学生が採用に期待するのは当然」と述べ、「同社にリーマン・ショックなどが経営に直接影響するとの認識があったかは疑わしく、学生への現実的な影響も十分考慮していない」と断じた」(同上)

そうであり、その結果が195万円、という、(期待権侵害の構成に基づくものとしては)決して少なくはない額の認容につながった。


問題となった会社特有の問題が存在した可能性もあるし、高裁まで行ったときに現在の判断が完全に維持されるかどうかはよく分からないところもあるのだが、これまでの結論だけ見れば、自分の不明を恥じるほかない。


正直、本件原告の方々が順調に正式入社に至っていれば、より多くの給与を得られたのは間違いないだろうし、その意味でこの結果を完全なもの、ということはできないだろう。


だが、これまで泣き寝入りするほかなかった学生たちが、安易に内々定を取り消す会社に対して反撃し、一定の成果を挙げたことの意味は大きい。


いずれ何らかの形で判決がアップされることもあるだろうから、今後の採用活動のあり方に一石を投じる判決として、参照されることを個人的には期待しているところである。