問題の所在はどこに・・・?

日経紙の法務面に「仮想空間新ルール模索」という記事が出ている*1


ざっとまとめると、「仮想空間の中で映像配信が行われたり、利用者が創作活動を行ったりすることが可能になってきており、現行ルールだけでは対応できない面がある」のでどうする?、という趣旨のコラムなのだが、読んでいて分からないところが多い。


例えば、記事の中には、

「オリジナル商品の創造と商品コピーがともに仮想空間で起きていれば、基本的にその紛争は仮想空間を運営する会社の規約に従うことになる。だが、現実世界で創作されたオリジナル商品に基づいて、仮想空間でコピー商法が行われた場合、あるいはその逆の場合について、現在の法律やルールは想定していない」

という一節があるのだが、

そんなはずはなかろう。

コンピュータが自動的に生成するような創作物であれば別の議論が出てくる可能性もあるが、一般的には現実空間だろうが、仮想空間だろうが、他人の創作物を無断で複製すれば著作権侵害になる、という前提に疑いはないと思われる*2


もちろん、「仮想空間内で創作活動がなされた場合」の創作物の権利が誰に帰属するのか(仮想空間運営者か、それとも創作した利用者自身か)、といった仮想空間ならではの問題は存在するし、その際に規約の解釈等が問題になることはあるだろうけど、それだって「インターネット掲示板上の書き込みの著作権の帰属」といった問題と基本的には変わらないわけで、参考にすべき事例はそれなりに蓄積されているのではないだろうか。


また、「初音ミク」の例で紹介されているような二次的創作の話も、「現実世界で認められる権利が権利者に帰属することを前提とした上で」権利者がライセンスルールをどのように設定するか、という話に過ぎない(しかも、これは仮想空間の次元に限られた話ではない)。


ゆえに、わざわざ表まで作って、

現実世界での複製・変更→原則として法律による
仮想空間での複製・変更→法律上の判断は不透明 or 原則としてその仮想空間の規約による

などという解説をするのは、ミスリードじゃないのかな・・・と思う。


アメーバピグとか、初音ミクとか、いろんなネタを盛り込もうとして、論点がごちゃごちゃになってしまったのかもしれないが、くれぐれも、あのコラムを読んだ読者の方が「仮想空間上では著作権法のルールがまだ確立されていないから、リスクを取ってもいいんだ」といった早とちりをしないよう願うのみである。

*1:日本経済新聞2010年6月21日付朝刊・第16面。

*2:利用者が著作権侵害を犯した場合に、仮想空間運営者がどのような制裁を課すか、という問題は別途出てくるが、そういった制裁だって、当然、現実世界の知財法の規律を前提としたものになるはずである。それを無視して、権利者の意向にかかわらず「コピーフリー」な仮想空間を作ろうものなら、運営者が間接侵害の責めを負う可能性すらある。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html