禁断の“神の手”が招いた悲劇

録画した映像を早起きしてわくわくしながら見ている人間が少なからずいるのは分かっているはずなのに、延長戦も後半に入った最後の最後のところで、放映チャンネルを切り替えた*1某国営放送のセンスのなさにはがっかりするほかないのだが(苦笑)、ダイジェスト映像で見ても、その場に居合わせた選手やら観客やらの歓喜と戸惑いは十分に伝わってきたので、まぁ良しとしようか。


ウルグアイスアレス選手の“神の手”(というか神業ブロック)。


1次リーグから“手を使う”プレーが目立った今大会だったが、とうとう究極の“禁じ手”が出てしまったなぁ・・・というのが率直な印象だ。


自軍のゴール前でGK以外の選手が手を使ってボールを止めたら、その場の1点を防げる代わりに、「相手へのPK&一発レッドカード退場」という厳しい制裁が課されることになる。だから、そんな割の合わないことはしない、というのが、通常の場面でのマインドだろう。


だが、120分の戦いが終わろうとしているまさにその瞬間、ラストプレーになるかならないか、という場面だったとしたら・・・



目の前を通り過ぎるボールを見送って悲劇の主役になるよりも、手を使ってでもボールを止めて、僅かでも失点の確率が下がるPKに運命を委ねたほうがいい、という判断が働いたとしても、まったく不思議ではない。


あの瞬間、あの状況で、スアレス選手にそこまでの利害得失の判断が働いていたかどうかは分からないけれど、仮に「確信犯」だったとしても、一概に彼を責めることはできないし、ましてやガーナが敗退した責任を彼に求めるのはお門違いだと思う。


ガーナがベスト4を目前にして悲劇を味わうことになった最大の原因は、“神の手”に1点を阻まれたことではなく、その直後に得たPKをギャン選手が決められなかったことにあるのは明らかなのだから・・・*2


* * * *


とはいえ、ウルグアイにとっては、残り2戦が、厳しい状況の中での戦いになることは間違いないだろう。


今後の試合では、アフリカ大陸希望の星を“禁じ手”を使って倒した「悪役」として、会場中からブーイングを浴びることを覚悟しなければいけないし、勝っても負けても、会見で“手”の話を必ず聞かれることになる、というのは容易に想像が付く。


しかも次戦は、(間違いなく今大会最強(だった))ブラジルを倒したオランダだ。


巧い上に、相手を苛立たせる狡猾さでは、南米勢に負けるとも劣らない*3チームだけに、試合運びに長けたウルグアイといえども、餌食になる可能性は決して低いとは言えない。


そうなると、この日の喜劇も、数日後の大きな悲劇の単なる序章に過ぎないように思えてくる。


「初代王座」という唯一の称号を持つ古豪が、アフリカの地で60年ぶりの優勝を果たす、というストーリーも、個人的には美しいと思うのだけれど、そう問屋がおろすかどうか・・・



なお、準々決勝に入って、ブラジル、ガーナと(自分にとっては)当て外れな結末で敗退していく結果が続いているだけに、今夜のドイツとスペインにだけは、一応改めて期待しておくことにしたい*4

*1:「総合」から「教育」に移ったらしい・・・。それなら最初から延長できるチャンネルで流しておいてくれればいいのに・・・。

*2:延長前半で既にダメージを負っていたギャン選手に蹴らせるのがベストだったのかなぁ?というのはちょっと思った。その後のPK戦では1番手できっちりとゴールを決めているから、ケガの影響はなかったのかもしれないけど。

*3:ゆえに、規律は取れているが全体的に国際舞台での経験が乏しかったブラジルの若手選手たちは、“最高のカモ”として食われることになってしまった。速く美しいサッカーの余韻を残したまま・・・。

*4:準々決勝初日のパターンからすると、案外、アルゼンチンの方は負けて、パラグアイの方が狡猾にのし上がってくる、なんてことがあるのかなぁ・・・と思ったりもするのだが。

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