大物擁立!(その2)

最近、大物裁判官・検察官OBを、いわゆる“四大”的な大手法律事務所が迎え入れるパターンが増えているような気がするのだが、ここに来てまた大きな“人事”が発表されている。

「大手法律事務所のTMI総合法律事務所は、9月1日付で前検事総長の樋渡利秋氏と知的財産高等裁判所所長の塚原朋一氏の2人を顧問に迎える。企業のコンプライアンス(法令順守)に対する助言や知財訴訟への対応を強化する狙いだ。」
日本経済新聞2010年8月18日付朝刊・第13面)

検事総長の大手事務所入り、と言えば、樋渡氏の前任の但木敬一氏が、森・濱田松本法律事務所に客員弁護士として入所したのが記憶に新しいところで、記事によれば、「大手法律事務所入りする検事総長はこれが2人目」とのこと。


検事長クラス以上の検察OBの場合、能力云々以上に、“箔”の力が大きいのであって*1、クライアント企業等に対して強い発言力を確保するために“大物”を押さえるメリットは十分に理解できるところである*2


一方、興味深いのは「知財高裁所長」を迎え入れた点。


初代所長である篠原勝美氏は、退官後、慶応大法科大学院の専任教員に就任されているが、弁護士としては活動されていないようだし、知財高裁に限らず、高裁所長クラスの裁判官が、退官後、弁護士として実務に積極的に関与する、というケースはあまり多くないのではないかと思われる*3


これに対し、今回は、塚原所長(2代目所長)を迎え入れて知財訴訟への対応を強化する」というのだから、このフレーズを文字通り解釈するなら、TMIも思い切った手を打ったものだなぁ、と。


確かに、平成15年1月に東京高裁知財部の部総括として着任されて以来、7年半もの長きにわたり“知財の顔”的な役回りを務められてきたのが塚原所長で、第4部の部総括時代の“斬新な”判決の数々*4や、所長就任以降の踏み込んだ発言*5など、インパクトのある仕事をされてきた方であるのは間違いないから、顧問就任後の活動も注目されるところではあるのだが・・・。


ここ数年、「四大」を凌駕する勢いで成長を続けてきたTMIが、迎え入れた“大物OB”をどのような形で“活用”していくのか、個人的には興味深々である。

*1:もちろん、組織の中で上に行ける人、というのは、それにふさわしい人格・識見も備えておられることが多いから、その点でも存在感を発揮しうるとは思うのだが・・・。

*2:法務の一担当者の意見など歯牙にもかけないような不逞な役員も、「元検事総長」の意見とあれば、渋々ながらも従わざるを得ない、というのが、多くの会社での実情だろう。

*3:もちろん、弁護士登録して“名誉職”的な役回りを務めておられる方は多いし、一線で活躍されている方も何名かは存じているのだが・・・。

*4:一番印象に残っているのは、「ヨミウリ・オンライン」の見出し利用について一般不法行為に基づく損害賠償を認容した判決(知財高判平成17年10月6日、http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20051015/1129473336)だが、「法律書著作権侵害事件」(知財高判平成18年3月15日、http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20060403/1144000949)などもかなり話題を呼んだと記憶している。

*5:特に、知財高裁で特許無効判断が下されることが多かった状況下で、「プロ・パテント回帰」的な発言をされていたのは、非常に印象に残っている(そして、実際、ある時期以降、知財高裁の判決の潮流は確かに変わった。http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20100519/1274635522参照)。

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