バージョンアップした「未完の大作」

本屋に行ったら、中山信弘教授のリニューアルされた概説書が平積みになっていた*1


特許法 (法律学講座双書)

特許法 (法律学講座双書)


改訂によりシンプルな「特許法」というタイトルになってしまったが、元々は『工業所有権法(上)特許法』というタイトルで、長年親しまれていた名著である*2


自分にとっても、これが、この分野の勉強を始めたての頃に初めて手にした特許法の概説書だっただけに、いろいろと感慨深い。


読みやすく分かりやすい(だが行間までじっくり読みこみたくなるような深遠さがある)中山教授の概説書なしに、自分が特許法の世界に足を踏み入れることはおそらくなかっただろう*3


ここ数年の間に、法科大学院生を意識してか、知財法に関する概説書の類の書がかなり本棚に並ぶようになった。


とはいえ、今回の改訂の後も日本語としての分かりやすさを意識された丁寧な筆致に変わりはなく、ここ数年の動向も十分に取り入れられている本書が、“初学者から経験を積んだ実務家まで、特許法と向き合おうとするものであれば一冊は手元におくべし”と言われるほどの存在意義を依然として有していることには、何ら疑いはないと思う*4


個人的な思いとしては、『工業所有権法』の続き(「下」)を読みたい、という思いが強かっただけに、弘文堂の編集者の方には、(師が何と言おうと)表題を『産業財産権法・上・特許法』とするくらいの気概を持ってほしかったなぁ・・・という思いは若干残ってはいるのだが(笑)、「新しい書籍を書く以上に、既に出した書籍に手を入れる方がエネルギーが必要だ」という業界格言もあるところだけに、貴重なエネルギーを改訂作業に充てて下さったことに敬意を評しつつ、時を見てじっくりと読み込んでみたいと思っているところである。

*1:発行日は今月末になっているが、先行して本屋に置かれているようで、Amazonでも既に購入できる状態になっている。

*2:「(上)」はあるが、「(下)」はない。ゆえに、「未完の大作」としても親しまれていたものだ。

*3:他の三法は専ら田村教授の「概説」三部作に依存していた自分も、特許法だけは中山教授の「工業所有権法・上・・・」を手放せなかった。

*4:“はしがき”で述べられているように、脚注に関しては以前のものに比べてかなり分量が割愛されているきらいがあって(判例評釈等については自分で検索することが容易になった、というのがその理由のようである)、かつてこの注を見ながら文献を片っ端から当たっていた自分としては、ちょっと残念だったりもするが・・・。

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