追いこみ過ぎたしっぺ返し?

“あの武富士”が遂に会社更生手続開始の申立てに追い込まれる見込みとなった。

「経営再建中の消費者金融大手、武富士は26日、会社更生法の適用を東京地裁に近く申請する方向で最終調整に入った。顧客が過去に払い過ぎた利息の返還を求める「過払い金」問題の解消のメドが立たず、自力再建を断念した。」
日本経済新聞2010年9月27日付朝刊・第1面)

少なくともこの半年くらいの間の、法廷にやってくる武富士の「支配人」の振る舞いを見ていれば、同社の資金繰りが相当苦しいのだろう、ということは容易に想像が付いたし*1降ってわいたような大量資金調達の話が流れた(?)時点で、こうなるのは目に見えていたといえるだろう。


元々消費者金融の中でも“ブラック“なイメージが強すぎて*2、大銀行の傘下に入ろうとしても入れなかったことが結局は命取りになってしまった。


記事では、過払金返還請求の負担が大きかった、ということだけがやたら強調される傾向にあるが、仮にそれがなかったとしても、今般の貸金業に対する厳しい規制とそれによる市場の急激な縮小を鑑みれば、“味方がいない”この会社が遅かれ早かれ同じ運命を辿ったことは間違いないように思われる*3


で、これから問題になりそうなのは、何といっても、過払金の返還を主張しているかつての“借り手”たちと、それに群がっていた弁護士、司法書士たちの今後の戦略だろう。


貸金業者が会社更生手続に入った場合に、債権届出のなかった過払金返還債権について失権効を働かせることが認められるか、という問題は、最近まで裁判所でかなり争われていたようだが、平成21年12月4日の最高裁判決によって、「更生会社が失権の主張をすることは信義則に反しない」という判断が示されており、ゆえに、債権届出をしないとその先に進むのはかなり難しいと思う。


そして、そんなに複雑な手続きではない届出自体を一応することができたとしても、その先の手続きは、よりシビアだ。


届け出る人間がどの程度いるかにもよるが、届け出る人が大量に出れば、その分弁済を受けられる率は大幅に下がるだろうし、更生管財人がしっかりと仕事をすれば、いい加減な引き直し計算や、裁判所で行われているようなやっつけ仕事的丸めこみで済むとはとても思えず、既に確定判決を債務名義として使える過払債権者を除けば、債権額自体が争われるケースも出てくるだろうと思う*4


ここ数年、パターンの決まった“過払訴訟“の世界の中だけで戦うことを生業としてきた人々にとっては、極めて悩ましい決断を迫られる場面が出てくるだろう。


まぁ、そもそも最近の“過払金返還請求”ブームを造り上げたのが誰だっか、ということを考えると、貸金業者側を“追い詰め過ぎた”側の人々が、今回のような“意図せぬ報復”を受ける、というのも、歴史の必然だろう、と個人的には思っていたりもするのだけれど・・・。

*1:そもそもほぼすべての事件で弁護士への訴訟代理の委任を行わず、(決して有能な人ばかりではない)支配人に任せるほかなかったところに、この会社の窮状がうかがえた。

*2:創業者絡みの不祥事などもあった。

*3:なお、この日の夕刊には、「DIP型会社更生手続」を使う、という情報も出ているが、そんなに優良な貸付債権が残っているとも思えない今回の倒産劇において、果たして「会社更生」という手続きが馴染むのかどうか(しかも経営陣まで残す必要があるのかどうか)という、素朴な疑問がある。

*4:ちょっとでも、更生会社の弁済原資を確保しようと思えば、おのずから過払金債権に対する態度も今まだ以上に厳しくせざるを得ないだろうから・・・。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html