珍しい裁判例

肖像権侵害をめぐる事件の判決の中でも、これはレアなのでは・・・?というニュースが報道されている。

「米ロサンゼルス銃撃事件で逮捕され、ロス移送後に死亡した三浦和義元会社社長(当時61)=日本では無罪確定=が、万引きの様子を撮影した監視カメラ映像をコンビニ店が取材記者に渡したのは肖像権侵害などに当たるとして賠償を求めていた訴訟の判決が27日、東京地裁であった。志田原信三裁判長は、記者への画像データの提供は「公益目的で相当」として、同店への請求を棄却した。」(日本経済新聞2010年9月28日付朝刊・第42面)

一般民事事件として審理された事件のようであり、判決文もまだアップされていないので、この判断の正確な評価をすることは難しいのだが、伝えられているところだけから見ると、「本来防犯目的で設置されている」防犯カメラの肖像撮影映像を、その目的外で利用することについても適法とした判決のように思われ、非常に珍しいなぁ、というのが率直な印象だ。


確かに、肖像権侵害の判断基準は、林真須美被告の法廷内隠し撮り写真をめぐる最高裁判決(最一小判平成17年11月10日)によって、(権利侵害を主張する被撮影者側にとって)若干ハードルが上がった感があり*1、防犯目的のための防犯カメラによる撮影等であれば、肖像権侵害にはならない、という考え方も前記判例の下では受け入れやすいところではあったのだが、それを目的外利用する、となるとまた話は別*2


いかに取材・報道目的が存在し、しかもそれが社会的に注目を集めていた被疑者(当時)にかかわる画像だったとはいえ、安易にそれを提供してしまえば、肖像権侵害の責めを免れないだろう、というのが一般的な理解であり、実務的にもそのような運用がなされていると思っていたのだが、そのような提供が「公益目的」の名の下に正当化された、というのは驚きである。


さすがに、

「監視カメラメーカーが画像を報じたテレビ番組の録画DVDを販促目的で配布した」

行為までは、適法とはされなかったようで、110万円の支払いが命じられているのだけれど*3


この争いが高裁以降まで続いていくのかどうかは分からないけれど、もし続くのであれば、ちょっと注目してみていきたい事件ではある。

*1:この判決では結論として隠し撮り写真の雑誌掲載を違法としたものの、原審が採用していた「原則違法→違法性阻却事由(名誉棄損とほぼ同内容の要件を満たす必要あり)の有無を判断」という論理過程を経ずに、「被撮影者の社会的地位・活動内容」や「撮影の場所・目的・態様・必要性」といった要素を総合考慮して、被撮影者の人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえてはじめて違法となる、という判断を示しており、撮影目的や撮影の必要性が強ければ適法とされる余地が強まるという理解も可能なものであった。

*2:元々前記最高裁判決も、撮影の違法性と撮影した肖像の「利用・掲載」の違法性とは、分けて考えているようである。

*3:これは当たり前、と言えば当たり前だろうと思う。そもそも、そんな画像を販促に使う神経が自分にはよく分からない。