日経紙の夕刊に週替わりで連載されている「人間発見」というコーナーがあるのだが、今週のターゲットは久保利英明弁護士、ということで読み物としてはなかなか面白かった。
担当している“聞き手”が、一時久保利弁護士と組んで“法化社会”キャンペーンを張っていた三宅伸吾編集委員だった、ということも、記事をよりボリュームアップさせた一因だろうと思う*1。
で、業界では異端児として知られる久保利弁護士の連載、しかも「法曹フロンティアを探して」というタイトルだけあって、随所に興味深いコメントが散りばめられている。
例えば、4日掲載の第1回では、法科大学院制度の意義を高らかに語られた上で、
「新試験になって昔より合格者が増えたため、「新人弁護士の質が落ちた」という人がいますが、どうでしょうか。裁判に勝つため、顧客に偽証を勧めていたベテラン弁護士から、「質が落ちた」などと言われてもピンときませんね。」(日本経済新聞2010年10月4日付夕刊・第9面)
と強烈な皮肉をお見舞いし、7日連載の第4回では、日弁連会長選での落選の背景、として、
「「改革派の票が割れて久保利さんが票を集めると、高山さんが勝つよ」。こう口説かれ、翻意した人も多かったとの分析を耳にしました」
「真偽不明の業界スズメのうわさは「今回は東京の平山さん、次の08年は大阪弁護士会の人の当選で話がついている」というもの。実際この通りになりました。」
「落選はしましたが、地方でのボス支配や派閥の結束力の強さなど弁護士界の実態を学びました。」
(以上、日本経済新聞2010年10月7日付夕刊・第9面)
と明に暗に痛烈な批判を加え、最終回では、
「私は死ぬまでとんがってフロンティアを開拓し続けます。」(日本経済新聞2010年10月7日付夕刊・第9面)
と高らかに宣言。まさに“久保利流”の面目躍如といったところである。
率直に言えば、ここ数年、かつての“久保利ブランド”が色褪せた、と感じられるような出来事、例えばご本人も記事の中で語っておられるような、事務所からの中村・菊地両弁護士の離脱や、「買収防衛」策“連敗”、日弁連会長選での敗北、そして、法曹増員・法科大学院制度への逆風&大宮法科大学院の不振*2といった出来事が続いており、かつてダントツのNo.1だったビジネス弁護士人気ランキングでも、ベスト10の下位に甘んじるようになって久しい、という実態もある。
一応下級審では結果を出してきている「一票の格差是正」運動にしても、ご本人が期待されたほど社会に浸透しているかどうかは、微妙なところだろう。
個人的には、それでもなお、古い殻に閉じこもられることなく、積極的な発言を続けておられるところに、もうひと花、ふた花・・・、的な、ギラギラした魅力を感じているところではあるのだけれど・・・。
“抵抗勢力”が時の流れを止めようとしている今だからこそ、我々はもう一度、久保利弁護士の一連の蹉跌を乗り越えての新たなご活躍に、期待すべきなのかもしれない。