新卒採用をめぐるパフォーマンス

最近、大学新卒者の採用活動の時期をめぐる議論がいろいろと喧しいなぁ、と思っていたら、遂に商社の業界団体が“画期的な(?)”パフォーマンスに走った。

「商社の業界団体である日本貿易会は17日、大学新卒者の採用活動の開始時期を現在より4ヶ月程度遅らせる見直し案を正式に決めた。2013年春入社の新卒から産業界全体で実施できるよう、18日に日本経団連に提言する。就職活動の早期化を是正し、学業に専念できる環境をつくる狙い。」(日本経済新聞2010年11月18日付朝刊・第3面)

前にも書いたとおり*1、自分は、真夏のクソ暑い時期に学生に負担を強いる上に、貴重な最後の夏休みさえ奪ってしまうような“後倒し”論には賛同しかねるし、そもそも最近の“学業に支障”云々の議論自体がナンセンスだと思っているから、商社業界のこういったスタンドパフォーマンスを見せられると、なんだかなぁ・・・という気持ちになる。

大体、就職活動が呑気に行われていた時代から、大学4年生になってまでわざわざ大学に毎日足しげく通うような学生はごく少数派だったし、そこで勉強したかどうかで、その先の人生に大きな差が付くなんてことは、ほとんどなかった。

むしろ、有名無実な協定が廃止され、3月、4月に内々定を貰える環境が整ったことで、要領のいい学生は、春休みが終わって間もない時期に早々と“大学に戻る”ことができ、目標が見えた状況で、夏学期の授業も、その後に来る夏休みも有効活用することができることができるようになったわけで、そのどこがいけないのか・・・、近頃の批判は正直言って、実態を踏まえたものとは思えない*2

確かに、大卒者の内定率が60%を切っている現状*3では、なかなか内々定が取れなくて就職活動が長期化する、という学生も少なからず出てくるだろう。

でも、そんなご時世に、「長期化を防止するために8月に一斉に集中して採用活動をやります」なんてことにしたら、それこそ、

「真夏の阿鼻叫喚生き地獄」

になるのは目に見えている。

それに、司法試験を目前に控えた連中が、春先キャンパスにあまり姿を見せなかったのと同じで、“夏の大一番”を控えた学生たちに、身を入れて授業を受ける余裕があるか、と言えばそれも大いに疑問なわけで・・・


個人的には、就職活動を学生の休暇の時期に合わせる、というアイデア自体は間違っていないと思う*4

だが、それが「4年生の夏休み」である必要は全くないし、ましてや商社の業界団体の発想に他の経団連企業が付きあう必要は全くない。

他の会社には、

「そっちが8月にやるなら、うちは3月(12月?)に勝負付けてやる」

というくらいの気概が必要だし、それがなければ優秀な人材を外資系企業に持っていかれてしまうだけの話だろう、と思う。

いくら横並び大好きな“人事業界”でも、右に倣えで8月に揃えるような、愚かなことはしない、と信じたいところではあるのだけれど・・・*5

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20101011/1286804687

*2:大学の先生方は、学生が授業やゼミに出て来ないと自分のモチベーションが下がるのかもしれないが、そんなことのためにかえって学生に不便を強いるのはナンセンスというものである。

*3:もっとも、10年前に比べれば遥かに大学進学率が上がっている現状を鑑みれば、この数字の“低下”にどれほどの意味があるのか、と自分なんかは思ってしまうのだけれど。

*4:学期中にやるのであれば、少なくとも、学生の講義時間に被らない時間帯にやるくらいの配慮は絶対に必要だと思う。残念ながら保守的な人事系の人間は、自分が採用の現場で体張ってる頃に何度提言をしても聞く耳を持ってくれなかったのだけれど。

*5:なお、いわゆる“留学帰り”組への対応、については、これまで通り別途枠を設けることで対応すればよいのではないかと思う。そもそも、留学に大学3年〜4年にかけて行く必然性があるわけでもないのだし(就職が気になるなら1年早く行くという手だってあるわけだし。)、就活のせいで留学に行く人が減った、という議論自体、眉唾だと自分は思っている。

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