これまで何度か取り上げてきた、プリンスホテルの日教組教育研究全国集会会場使用取消事件。
地裁判決から約1年4ヶ月、というタイミングで高裁判決が出た。
「会場の使用契約を解除され、教育研究全国集会の全体集会を開けなかったとして、日本教職員組合と傘下単組、組合員らがプリンスホテル(東京)などに賠償を求めた訴訟の控訴審判決が25日、東京高裁であった。園尾隆司裁判長は約2億9000万円の請求全額を認めた一審・東京地裁判決を変更し、6割減額した約1億2500万円の支払いを命じた。」
(日本経済新聞2010年11月26日付朝刊・第42面)
これまでの流れ、特に、原告の請求をほぼ100%命じた東京地裁の判決と比較すると、プリンスホテル側が“かなり巻き返した”と評価しても過言ではないだろう。
賠償金が減額された理由としては、
「約1900人の組合員ら個人の請求について「精神的苦痛を負ったとしても、日教組が受けた損害に含まれる」とし、一審が計1億円と認定した賠償額をゼロにした」
ということが挙げられており、さらに実損分のみを対象としたことで、約2億9000万円だった賠償額は半分以下にまで落とされた。
加えて、一審判決では認められた全国紙への謝罪広告掲載についても高裁判決では否定されている。
・・・とはいえ、これはあくまで「損害論」という、争い全体からみれば枝葉末節の話。
プリンスホテルによる使用契約の解除が違法である、という判断が、動かし難いものとして固まってしまったことに変わりはない。
おそらく一審では、被告側も債務不履行責任の成否や不法行為責任の成否といった本筋での反論に労力を割いていて、損害論が原告の言いっ放しになっていたところもあったのだろう。
その意味で、巻き返した努力は認められて然るべきだと思われるのだけれど、それでも1億円以上の賠償義務は残るし、会社の信用、名声に付いた傷も簡単には癒せない*1。
実際に被告側の代理人や訴訟担当者として本件に関与している人々にとっては、労多くして報われ感が少ない・・・
そんな状況ではないだろうか。
引き続き、これは他山の石。そう思っている。
(参考)
http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20080203/1202011341
http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20090729/1249056244
http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20091116/1258963475
*1:使用を断った相手が相手だけに、意外に一部でこの姿勢を“評価”している、という人々もいるのかもしれないが・・・。