駒込大観音事件の決着

観音像製作をめぐって、著作者人格権侵害の成否が争われた、通称「駒込大観音」事件。

ここ2年の間に出された東京地裁判決と知財高裁判決それぞれにおいて、著作者人格権侵害に基づく名誉声望回復措置の具体的内容について判断が分かれたこともあって、一度きちんと整理して記事にしておきたいと思っていたのだが、もたもたしている間に、最高裁の決定が出てしまった。

「観音像の頭部を無断ですげ替えたのは著作権侵害に当たるとして、制作した仏師の遺族が寺に対し元の頭部に戻すよう求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は9日までに、遺族側上告を退ける決定をした。仏像の原状回復は認めず、経緯を説明する新聞広告の掲載を命じた二審・知的財産高裁判決が確定した。」(日本経済新聞2010年12月10日付朝刊・第43面)

「名誉回復等の措置」(著作権法115条)として、どこまでの措置を是とするかというのは、議論し始めるとなかなか奥が深い話だと思うのだが、法解釈の問題というよりは、認定された事実に照らして“どこまでやらせるか”というレベルの問題なので、最高裁に判断させるには馴染まないかな・・・というのは、かねてから思っていたところ。

そして、結果として最高裁自身も、上告不受理決定という形で本件を収束させることになった。

知財高裁の判決において、回復措置の内容を変更した論理過程があまり細かくは明示されておらず*1、それゆえに、最高裁で分かりやすい理屈を考えてくれれば・・・ということも、少しは期待していたのだけれど、まぁこれは仕方ないか。

いずれにせよ、早いうちに遡及的に地裁・高裁両判決へのコメントができれば、と思っているところである。

*1:もちろん、前提とする事実の列挙はなされているのだが、ベースにしている事実が原審のそれとは大きく異ならない、という状況で、評価を変えた背景については、判決ではあまり詳しく論じられていない。

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