“エース”不在の重さ

昨日放映されたフィギュアスケート、グランプリファイナル。

五輪の翌シーズンということもあって、去年までに比べると今年はそんなにGPシリーズをじっくり見ていたわけではなかったのだが、さすがに“ファイナル”ということになると見ずにはいられず、フリーは全滑走録画視聴。

男子で“マイケル・ジャクソン”を使うのが今年の流行なのかなぁ*1とか、採点方法が変わったせいか、何となくジャンプよりスケーティングの方が重視されるようになってきたのかなぁ*2、といった発見もあり、出場選手の実力が拮抗していたこともあって、順位争い的にも比較的面白かった。

とはいえ、男女シングルとも、最後の6人の中に日本人が3人、となると、国際大会としての面白さは欠いていたのも事実*3

しかも、結果から見れば、日本勢は男女とも優勝を逃し、来年の世界選手権に向けて一歩抜けだすような強烈なインパクトを残すこともなかった・・・という点で、なかなか評価が難しい大会だったのではないかと思う。


例えば男子シングル。

SPで首位に立っていた織田信成選手がそのポジションを守り切れなかったのは“いつも通り”のことだとしても、巻き返しが期待された小塚崇彦選手がフリーだけでパトリック・チャン選手に15点離されてしまう状況では、世界選手権に向けての期待も薄れる、というもの。

他の選手に比べて積み重ねてきた実績が乏しいがゆえに、演技構成点をさっぴかれるのは仕方ない面もあるが*4、要素点でも差を付けられている*5のはちょっと悔しい。

そして、さらに深刻だったのは高橋大輔選手の方で、フリーの得点で言えば最下位。“世界チャンピオン”の格があるゆえに、演技構成点の“貯金”で何とか恥ずかしくない順位に踏みとどまってはいたが、昨シーズンのプログラムが良すぎただけに、物足りなさと覇気のなさが気になった。


一方、女子の方は男子に比べれば見せ場は作ったと思う。

SPで5位と出遅れた安藤美姫選手は、すべてのジャンプをノーミスで決めて、珍しくガッツポーズまで見せる会心の出来。

鈴木明子選手も実質2シーズン目で、昨シーズン以上に伸び伸びと滑っていたように見えたし、村上佳菜子選手も前半のフリップジャンプのミス(3回転→1回転)で萎縮することなく、最後まで上手にまとめた。

フリーだけのスコアを見れば、安藤選手は1位、村上選手は2位、と堂々の結果だ。

だが、それでいてSP上位のアリッサ・シズニー選手、コストナー選手を逆転するには至らない・・・*6

GPファイナルで何度かメダルを取った実績のあるコストナーはまだしも、シズニーとなると2005-06年シーズン以来の出場*7アメリカの女子選手らしからぬスケーティングの優雅さやスピン、スパイラルのレベルの高さ*8には定評があるものの、肝心な場面での勝負弱さゆえ、来年の世界選手権に出られるかどうかも怪しい選手である。

にもかかわらず、SPでのビハインドを跳ね返せないあたりに、“エース”不在の状況で臨むことの限界があるような気がして仕方がない。

安藤選手は、高難度のジャンプを決めても加点がイマイチ付かない上に、スピンのレベルも取れない。
鈴木選手は、フリップジャンプで2度のエラーエッジが痛かった。
そして、鈴木選手、村上選手ともに、国際大会の実績不足ゆえに、演技構成点が見た目よりも低く出てしまう。

たら、ればは禁物だが、もしここに浅田真央選手が出場していて、平均レベルの演技をしていれば・・・と思うと、いろいろと考えさせられることは多かった。


皮肉にも、GPファイナルでずば抜けた結果を残した選手がいなかったがゆえに、日本選手権での一発勝負で浅田真央選手が代表選出される可能性も出てきたわけで、4季前の“チャルダッシュの逆襲劇”の再来を期待するファンとしては*9、それが一つの希望なのだが・・・。


まずは日本選手権。
24〜26日に繰り広げられる、ビッグハットでの勝負の行方に注目したい*10

*1:いきなり最初の2人の滑走者(アモーディオ選手、ベルネル選手、ちなみにどちらも欧州人)がマイケルの曲で滑りだした時はどうなるかと思った。個人的にはエキシビジョンならともかく、公式試合で使うのはどうかなぁ・・・と思っているのだが。

*2:今回出場した選手(特に女子)がたまたまそうだった、のかもしれないが。

*3:トップ選手のレベルの平均値を取れば日本が上位に来るのは疑いようがない事実だとしても、上位6人の中に3人入るレベルか、と言えば疑問もあるわけで、一流選手が軒並みGPシリーズを回避する五輪翌シーズンならでは、のメンバーだったのは間違いない。

*4:この日のフリーでは全体で4番目のスコア。

*5:特に冒頭の4回転ジャンプだけで5.5点差。

*6:コストナー選手と村上選手のスコア差は僅か0.01点だから、あと一歩、だったのも事実だが・・・。

*7:浅田真央選手が優勝した大会で最下位。

*8:フリーでもスパイラルのGOEが+2.14、終盤のスピンでレベル4、GOE+1.43連発、と下手なジャンプよりもスコアを稼いでくる。

*9:というか、あんな展開にならずに、すんなり逃げ切ってくれた方が心臓にはいいんだろうけど・・・。

*10:ちなみに過去長野で開催された全日本フィギュアでは村主選手が2勝、2位・2回、と猛烈な強さを誇っている。さすがに今回は厳しいだろうけど、かすかな期待はかけてもいいだろう。

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