どっちなんだ日経?

前日の日経紙に、「番組のネット配信にルールを」という社説が掲載されていた*1

先般の「ロクラク2」の最高裁判決を受けての社説なのであるが、その内容と言えば、今回の判決を、

「法制度や放送の枠組みにも課題を提起した」もの

と評価するものであり、

「二審と最高裁の判断は番組の転送技術をどう評価するかで異なる」
「知的財産の専門裁判官の判断を最高裁が覆したのは、新しい技術を想定した規定が現行法にないためだ。その意味では著作権法自体を現実に見合った形に改正していく必要があろう。」

「放送事業が技術革新に追いついていない面もある。」
「外国でも日本の番組を見たいという需要は着実に増えている。海外駐在員が番組転送のためサービス業者と契約したのはその表れで、放送局もそんな声に応えるべきだ。」
「日本の放送局も視聴者向けに新しい映像配信サービスを提供できるよう、新たな法制度やルール作りを急ぎたい。」

と、最高裁の結論だけには乗っからない、柔軟な考え方を示したものである。

これは、単に「権利侵害」をしていた事業者を批判するだけではなく*2、時代に応じたサービスを提供できていない放送局の側にむしろ苦言を呈する、という、従来、法務面等で示されていたこの新聞の論調にも近いものだといえるだろう。

だが・・・


ふと立ち止まって思い返すと、日経紙はほんの1ヶ月前に、「フェアユース」に向けた動きを強く牽制するような社説を出したばかりである*3

「ロクラク2」事件は、あくまで放送番組の転送サービスに照準を宛てた事件ではあるが、この場面での法の規律を

「新しい技術を想定した規定が現行法にない」

と評価するのであれば、既存の文字媒体を活用したインターネット上での様々な試みについても「想定した規定がない」ということになるだろうし、「著作権法自体を現実に見合った形に改正していく必要」がある、ということになろう。

そして、「現実に見合った」形に改正していく、というからには、実質的な権利侵害行為を条文で明確に規定した上で、そうでないものについては、一般条項的フェアユース規定でも作って、無駄に萎縮効果が生じないように整理すべき、ということになるんじゃないか、と思うのだが、それは、「(極めて限定的な)権利制限条項にすら疑念を投げかける」同紙の先月の社説のスタンスと矛盾しないのかどうなのか・・・。


おそらく、日経紙の記者としては、「所詮は他所の業界の話」だし*4、“番組転送”との対比で“記事のインターネット配信”はとっくの昔からやっているから問題ない、と思ったのかもしれないが、紙にせよインターネット版にせよ、「必要な記事を使いたいときにお金を払って使う」というスキームがまったく確立されていないからこそ、“無断使用”の問題が起きるわけで、“全てのコンテンツをパッケージで売ってナンボ”という商売モデルから脱却できていない、という点では、放送局も新聞社も何ら変わりはない。

他所の業界を批判するのは簡単。

だが、上記のような文脈で、「放送局もそんな声に応えるべきだ」と主張するのであれば、我が身を振り返って、「新聞社もそんな声に応えるべきだ」という批判に耐えられるのかどうか、検証する必要も同時に出てくるのではないだろうか、と思う。

でなければ、“二枚舌”のそしりは免れえないだろう・・・と思うのだ。

*1:日本経済新聞2011年1月31日付朝刊・第2面。

*2:というか、上記社説の中に事業者を“批判”するトーンはほぼ皆無である。

*3:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20101223/1293650866参照

*4:テレビ東京」のことはとりあえずここでは忘れておこう。