日本版フェアユース規定導入に向けたカウントダウン。

ここ何年か越しで議論が続けられてきた「権利制限の一般規定」導入に関し、ようやく審議会での議論が一つの節目を迎えた。

文化審議会は31日、東京都内で総会を開き、他人の著作物を許可なく利用できる範囲を定める「権利制限の一般規定」の著作権法への導入を求める分科会の報告書を了承した。文化庁は早ければ開会中の通常国会著作権法改正案を提出する。」(日本経済新聞2011年2月1日付朝刊・第38面)

了承された報告書は、おそらく↓*1
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/housei/h22_shiho_12/pdf/shiryo_3.pdf

導入議論開始当初の“押せ押せ“ムードはいつのまにか消え去り、法制問題小委員会での議論の最終段階に差し掛かるあたりでは、各種業界団体の激しいネガティブキャンペーンも展開されるようになってきていたから、一体どうなることやら、と思っていたのだが、何とかここまでこぎつけることができたのは何よりである。

「一般規定」とはいっても、対象となる利用行為の要件はかなり限定されたものになっているし、今後の条文化の作業の過程で、「一般規定」としては機能しえないような“骨抜き”的条項が入るだけ、ということになってしまうリスクもあるのだが、何の手がかりもなく“権利濫用の一般法理”に頼って防戦するよりは、まだ(ユーザーにとっては)マシ、ということで、小さいながらも大きな一歩、と今の段階では評価しておきたい。


なお、報告書には、権利者サイドとのバランスを取るかのように「技術的保護手段の見直し」という章が付加されている。

専ら権利者サイドの声が強い論点の割には、

(1)CSS等の「暗号型」技術やゲーム機・ゲームソフト用の保護技術について、「技術」面にのみ着目するのではなく、契約等の社会的実態も含め、保護技術が社会的にどのような機能を果たしているかとの観点から評価し、複製等の支分権の対象となる行為を技術的に制限する「機能」を有していると評価される保護技術については、技術的保護手段の対象とすることが適当であること
(2)アクセスコントロール「機能」のみを有していると評価される保護技術について、著作権法の規制を及ぼすことは、時間的な制約等もあることから、技術的保護手段として位置付けるとの結論を得ることは適当ではないこと
(3)回避規制の在り方については、引き続き現行著作権法の整理が妥当であること

と、比較的穏当な結論に収まった感はあるが、この辺も条文の作り方次第、というところがあるので、引き続き国会にどのような形で改正案が提出されるのか、目を配っておく必要があるだろうと思う。


正直、今の政権の状況を鑑みると、法案を提出しようと思ったときに、文字通り「通常(の)国会」が存在しているかどうか、いささか不安要素が強すぎるのではあるが、そこは二度手間三度手間覚悟で、文化庁の中の方々のご健闘をお祈りしたいところである。

*1:本年1月17日の法制問題小委員会での「配布資料」としてアップされているもの。

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