まったりとした土曜日、朝刊の1面にいきなりドカン、と載っていて、ちょっと驚かされた。
「公正取引委員会が実施する合併審査改革の内容が18日、明らかになった。審査期間が長引く一因とされる事前相談制度を廃止して、届け出後の法定審査に一本化する。審査の過程での理由説明や最終的な判断理由を公表するなど、企業側の不満に対応して透明性を高める。」(日本経済新聞2011年2月19日付け朝刊・第1面)
ちょうど、新日鉄が公取委の権威に挑戦するかのような合併計画を発表した直後だけに*1、なおさらインパクトが大きいニュースではあるのだが、冷静に考えてみると、「廃止」といっても何が変わるのか、良く分からないところはある。
記事にもあるように、「事前相談」が「公式の」相談制度として設けられたのは、
「規制される側が、みずからの行為に関する安心感を高めるため」に「所定の要件を満たして事前に相談することによって、所定の恩典を享受しようとする」*2
という企業側のニーズによるところが大きい。
そして、「詳細審査(第2次審査)」に移行するまでは相談内容も結果も公表されない、という、“非公式な”手続きならではのメリットがあることこそが、「事前相談」制度の最大の魅力であった*3。
もし、日経の記事の図解にあるように、企業合併に際しての事実上最初の“手続き”が、法定されたものではない「相談」から、法に則った「審査」に完全に変わる、というのであれば、それは確かに大きな変革となるだろう。
だが、いくら「1次審査」「2次審査」という2段階の法定審査の手続きを設けて、「1次」の方を迅速に進める、といったとしても、それが「法定審査」として世間の目に晒されることになる、ということになれば、機密性が高くセンシティブな企業合併の話をそうそう簡単に持ち込むわけにはいかない。
そうなると、結局、「1次審査」に入る前に、公取委側の感触を探るための非公式な「事前相談」が再び行われるようになる可能性は高いし、公取委の側でも大規模な合併事案では「法定審査のキツキツのタイムリミットに苦しめられるよりは・・・」と、それを推奨するようになる可能性は否定できないと思う。
「1次審査」の制度の作り方次第では*4、「事前相談」制度の代替としてうまく機能する可能性がないとはいえないのだが、少なくとも今の段階では、日経紙が記事で煽るほどの効果は見込み薄なんじゃないか、というのが率直な印象である。