今さらではあるのだが・・・

手元に来るのが少し遅かった上に、読む暇もなくしばらく放置してしまったせいもあって、今さら・・・感が強くなってしまったが、久々に「BLJ」を取り上げて見ることにしたい。

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2011年 04月号 [雑誌]

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2011年 04月号 [雑誌]

個人的に今号で一番面白かったのは、山地克郎・ソフトウェア情報センター(SOFTIC)専務理事の回顧記事。

何といっても、“キルビー訴訟”歴史的勝利の立役者、という我が国の知財の歴史に名を刻むお方だけに*1、米国企業との訴訟の歴史を振り返るコメントにも重みがあるわけで・・・。

一部で物議を醸していたようだが、

「弁護士に使われるな、弁護士は使うものだ」

というフレーズも、この方が言うからこそ、説得力があるし活字にもできる。

「訴訟を恐れず準備を万端にしておくことが、訴訟を避ける一番の方法」

なんていうセリフも、日々紛争に直面している身にしてみれば、まさにその通りなわけで。

順繰りの「法務部長紹介」も良いのだけれど、個人的には、法務業界の“Legend”とも言うべき先人の方々をこの雑誌にはもっと取り上げていただきたいと思っている。それができるのはBLJだけだと思うから。

特集「損害賠償トラブルの回避・解決策」

「損害賠償」というのは、企業法務の実務において、最もシンプルでありながら最も奥が深い分野だけに、今回の特集もなかなか読み応えがあった。

特に、「担当者が語る「契約書でできること、できないこと」〜ビジネスの実情に応じた紛争解決の方法」というコーナーに掲載されている様々な業界の担当者の声には、節々で“本音”が現れているところも多く、面白い企画になっていたと思う。

もっとも、「契約をめぐる損害賠償」というテーマだっただけに、欲を言うなら、「業種」というカテゴリーにあてはめて担当者の声を拾うより*2、「法務部門の規模」や「社内での法務部門の位置づけ」といった点に着目してインタビューした方が、より興味深い結果になったのではないか、と思うのも事実*3

同じ業界でも、会社によって契約に向けた意識や具体的な対応が全く異なる、というのは、しばしば経験する話だけに、今度同じような企画を組む時は、是非そういった視点も反映していただきたいなぁ、と思っている。

なお、特集の冒頭にインタビューが掲載された弁護士の人選に関しては、個人的にはちょっと・・・と感じるところもあったのだが、その辺は大人の事情も入っているのだろうか?

損害賠償請求訴訟を多数経験していて腕もいい弁護士の多くは、こぢんまりと仕事をしている街中の昔ながらの弁護士たちで、彼/彼女たちが、雑誌の取材に応じてどうこう・・・というのはちょっと考えにくい、ということを考えると、やむを得ないのかな・・・とは思っているのだけれど、ちょっと気になるところではあった。

その他

元仙台、広島の高裁長官まで務めた相良朋紀弁護士の「「訴訟は水物」談義」というタイトルの記事はなかなか面白かった。

書き出し部分で、ウィットの利いた話を展開したかと思えば、記事の中身は元裁判官らしく、基本的な考え方から応用まで、なかなかためになる情報が随所に盛り込まれている。

もっとコンパクトな内容でもよいから、エッセイ等の形式で継続的にこういった方の文章が読めるようになれば、BLJを定期購読するモチベーションも湧くのになぁ・・・(笑)、などと思ってしまうのは、欲張り過ぎだろうか。

*1:それゆえ、未だにSOFTICの・・・というより、富士通の元法務・知的財産権本部長という肩書の方がしっくり来る。

*2:この企画に限らず、BLJで企業実務者の声を拾う時は、必ず「業種」に着目する傾向が強いので、ある程度はやむを得ないところもあるとは思うのだが・・・。

*3:数十人、数百人規模の法務部隊を抱え、「ひな形からちょっとでも修正した契約書は全件チェックする」という会社と、小所帯で、営業部隊の力を借りながら、流したり透かしたりして法務の仕事を回していく会社とでは、契約上のリスクヘッジに対する考え方もおのずから異なってくるのは間違いないところだから。

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