「企業結合規制見直し」に一つの決着。

3月の上旬からパブコメの募集が行われていた企業結合に関する新たな審査指針(案)。
震災を挟んだこともあって、どのタイミングで実施に踏み切るか、注目していたのだが、公取委は当初の工程案をほぼ維持したまま、改訂に踏み切ることにしたらしい(新しい運用指針はhttp://www.jftc.go.jp/pressrelease/07.march/07032801-01-tenpu03.pdf)。

公正取引委員会は14日、企業合併の新たな審査指針(ガイドライン)を公表した。企業の国際競争力強化を重視し、商品が国境を越えて取引されている場合は「世界市場」「東アジア市場」など国際市場でのシェアを重視して判断する方針を明記した。また市場規模が縮小傾向なら合併をしやすくする。事前相談制度も廃止し、審査期間も短くする。」(日本経済新聞2011年6月15日付け朝刊・第1面)

日経紙上では、「国境を越えて取引がある市場」として「東アジア市場」と明記したことなどを好意的に評価しているようだが、元々公取委としても、判断に際してその程度の(広げた)市場画定を行う必要があることは十分に認識していたはずで、あらためて取り立てて褒めそやすほどの必要性はいまいち感じられない。

「法定審査一本化」の方向性にしても、審査の迅速化や、審査当事会社の負担軽減にどこまでつながるか、というのは、新しい手続きの下での運用を実際に見てみないと、何とも言えないように思われる*1

ちなみに、パブコメには、実に18頁分にわたる意見が寄せられているのだが、

「今回の改正で判断基準が緩和されることにより,仮に規模の大きな企業を中心とする組織再編が実現し,より大きな市場支配力を有する企業が出現した場合,取引先である関連中小企業の価格交渉力が更に低下することが懸念されるのに加え,輸入商品の代替性や海外からの供給可能性が高いと判断された市場であっても,現実には中小企業が輸入商品を調達することが必ずしも容易でない場合も起こり得るなど,中小企業の競争条件が不利になる懸念も残されている。」(団体)

という意見に対し、

「今般の改正は,過去の審査実績等を反映したものであり,審査の実質的な判断基準を緩和するものではない。企業結合によって競争が実質的に制限されてユーザー等である中小企業に不利益が及ぶことはあってはならず,そうした懸念がある場合には企業結合審査において的確に対処していくこととしている。」

という回答がなされている。

これまで“事前審査”制度の下、水面下で潰された案件がどれほどあるのか、外から十分に把握できているわけではないので、何とも言えないのだが*2、上記回答が意見提出者に対する単なるリップサービスでないとしたら、審査指針の改訂で実質面でも何かが変わる・・・と期待している向きにとっては、残念な結果になりそうなのであるが・・・。


まずは、既に事前審査なしに大胆な合併表明をしている新日鉄と住金の企業統合のケースが、一つの試金石になるのは間違いないが、それまでの間にも公取委の審査ラインに乗るであろう、大なり小なりの案件がどうなるか、というところにも、こっそりと注目しておくことにしたい。

*1:かえって「事前相談」というオブラートがなくなったことによって、不利益を被る会社が出てくる可能性も念頭に置いておいた方が良いのではなかろうか。

*2:手続きが面倒、というのはさておき、実質的には真摯に検討された合併そのものを断念させるほどのプレッシャーを公取委がかけていたわけではない、という推論も成り立つところではある。