総理の執念。

ここのところもう何か月も“死に体”と言われて久しい菅直人首相が、ここに来て震災・原発対応シフトで内閣を小幅改造。のみならず、敵方の議員を政府スタッフに取り込む、という荒業までやってのけ、70日どころか、本当の意味で復興にめどがつくまでやり遂げる、という意欲を見せている。

政権が変われば、それだけで商売になるメディアは、論説委員のコラムから政治面のベタ記事まで、“菅降ろし”の風を吹かせようと躍起になっているが、文字通り、そんなのは“どこ吹く風”。

外野の雑音にめげることなく、ちょっとやそっとではへこたれない、そんな執念を存分に発揮している姿を見ていると、むしろ爽快感すら感じさせる。

自分も、浜岡原発の一件をはじめ、今の政権がこれまで(特に震災以後)とってきた個々の政策については、違和感を抱く点が決して少なくないのだが、これまで首相の座を淡泊に放り投げ続けてきたひ弱な政治家たちに比べれば、今の首相の方がよほどまし。

大体、地震と大津波原発事故が一緒に重なってしまった今回のような異常事態の下で、トップの首をすげ替えたくらいで、世の中がうまく回ると思う方が間違いだろう。

トップが変われば、政権を支えるスタッフも変わる。そうなれば、これまで地味に、継続的に進めてきた施策だって、すべてゼロリセットになってしまうリスクも生じてくるわけで、そのような事態を引き起こさない、というだけでも、今の政権を維持させる意義はある、と自分は思っている。


まぁ、自分の場合、元々、市民活動家出身らしく、局地的なゲリラ戦に強い(しかも、何度表舞台から姿を消しかけても打たれ強く表舞台に蘇ってくる)この政治家を決して嫌いではなかった、というか、就活の時には“尊敬する人”として名前を挙げるくらい敬意を抱いていたからなおさら・・・というのはある*1

民主党が大政党になってしまって以降は、どちらかと言えば組織をバックにした言動が目立つようになってきて、首相になられた時も、その辺が若干引っかかっていたのだが、党内で事実上少数派に転落して、内閣不信任案があわや可決されるのでは・・・?という事態に陥ってから、土壇場の策略で小沢・鳩山連合を葬り去るまでの動きなどを見ていると、まだまだ応援できそうな気になってくるから不思議だ。


ゲリラ部隊の小隊長如きに一国の総理が任せられるのか、という批判は当然出てくるだろうし、一般論としては、そのような意見にも一理はある、と言えるのだろう。

だが、この国のここ何年かの停滞の原因は、“ゲリラ部隊の小隊長すらできないリーダー”が、重要な政治課題から逃げまくったあげく、政権をたらい回しにしてきた、ということにあるのもまた事実。

追いつめられたゲリラ部隊が僅かな活路を求めて発揮する“執念”とそこから湧き出てくる莫大なエネルギーの一部だけでも目下の課題に振り向けることができるなら、これまでの首相や今名前が挙がっている“この先の首相”以上に大きな成果を残せると自分は信じている。

まずは目先の国会。そして、その先、8月も終わりの蝉の声を聞くことには、また新しいドラマが生まれるのではないか・・・と、期待するところは大きい。

*1:自分自身も気質的には、大軍団の一翼を担って上品に横綱相撲に徹するよりは、小部隊で敵陣に切り込んでいって不利な状況で一矢報いて悦に入るのが好きなクチだから。

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