経験はプライスレス。

最近、日経の法務面は、メインの記事よりもサイドの記事の方に関心を魅かれるものが多いのだが、この日もそうだった。

「国内初となる民間の弁護士就職支援企業、「日本司法サービスセンター(JSC)」(東京・千代田)が11月1日に営業を開始した。新人弁護士を対象に法的書類を書く上での注意点を研修で教えたり、知識を生かすための法律相談の場を提供したりして早期に独り立ちできるよう有料で支援する。司法制度改革で弁護士数は年々増えており、新人弁護士の就職難に一石を投じる可能性もある。」(日本経済新聞2011年11月7日付け朝刊)

どういう素性のサービスかな・・・?と疑問に思って調べて見たら、代表者(大友幸雄氏)はTKCで「LEX/DB」を売っておられた、なかなかのやり手の方のよう*1

判例検索サービスの勢力図を完全に塗り替えてしまった大友氏が、積年の課題と言われていた「弁護士サポートサービス」の分野に乗り出した、ということは、この分野も、いずれ大きな市場に育つ可能性は高いといえるだろう。

もっとも、記事の中でも指摘されているとおり、「就職先に恵まれない新人弁護士」をターゲットにしたサービスにしては、入会金21万円、会費月額5万2500円、というのはいかにも高い*2

貸しオフィス的機能もあるようだから、それを考えれば・・・という相場ではあるのかもしれないが、単なる「応接室」のレンタルなら、弁護士会の小部屋だってタダで使えるわけだし、喫茶店の貸会議室でも支障はない。
コピーや事務作業ならキンコーズで足りるし、判例DBだって、LEXIS社のを使えばせいぜい年20万円も払えばOKだ。

となると、専らこの会費は、「ノウハウを伝授する」ことへの対価、として位置づけられることになるのだろうが・・・。



個人的には、どんな仕事でも、仕事をやる上で本当に必要な「スキル」や「ノウハウ」っていうのは、お金を払って人に話を聞いたところで、身に付くものではない、と考えている。

もちろん、まったくの新卒で、何のとっかかりもなく実務に出ていかないといけないよう人だと、社会人教育+商売人教育的なものを受けることに一応の価値を見いだせるのかもしれないが、それだって、修習の機会で得られる以上のものを得られるのかといえば、疑わしいところは多い*3

スキル的な面に関しては、修習後も継続的にフォローしてもらえるだけの同期、先輩とのネットワークをしっかり確保する、営業的な面に関しては、先述したネットワークに加え、自分が世の中で培ってきた、そしてこれから培うあらゆるネットワークを貪欲に駆使していく・・・。

どんなにお金をかけても手に入れることができないそういったあれこれを駆使し、基本に忠実に、かつ真剣に目の前の仕事一つひとつに向き合っている人は、今のような環境の下で、即独ないしそれに限りなく近い状況であっても、既存の法曹と互角に渡り合って、着実に地盤を築いていっている。

そんな姿をいろいろと見ているだけに、高額な会費に貴重な資産を費やす前に、もっともっとできることがあるんじゃないの・・・?と、言いたくもなるもので。


まぁ、元々そんなに面倒見の良い業界、というわけでもないし、即独した人以外にも、自分のスキルをブラッシュアップさせる機会を渇望する人が多い、という事実もあるだけに、サービスの価値全てを否定するつもりはないのだけれど、いろいろと考えさせられるところが多いニュースであった。

*1:http://www.i-jsc.jp/pc/contents25.html

*2:ちなみに、後に職場に送付されてきた「飯田橋司法サービスセンター」のリーフレットを見たら、入会金は20万円、会費6万円、という設定になっていた。どちらが正解なのだろう・・・?

*3:もちろん、修習の過程でそういったスキルやノウハウを吸収するためには、それなりの心構えがいる。「研修所を一歩出たら、自分の力でやっていくんだ」という心構えを持って臨まないと、ただの社会科見学になってしまう・・・そんな怖さが今の修習にはある。