華麗なる復活。

昨シーズン、最後の最後で、震災のあおりを受け、本来行われるはずの東京での世界選手権が流れてしまった・・・という衝撃もあり、今シーズンも開幕後しばらくは、フィギュアスケートの話題から遠ざかっていたのだが、NHK杯で、久々に日本人スケーター達の滑りをじっくり見て、ちょっとした感動を味わうことができた。

特に女子シングル、鈴木明子選手のショートプログラムの滑走の素晴らしさ。

冒頭で自身初の3回転-3回転の連続ジャンプを決め、それ以降も全てのジャンプをほぼ完璧に決める。
もちろん、ステップ、スピンの美しさは相変わらず健在で、音楽表現もお手本になるような完成度の高さ。

もう26歳、今シーズン中には27歳になる鈴木選手が、進化し続けた末、自己ベストのスコアを叩き出す、というところに、何とも言えない感銘を覚えた。

翌日のフリーでは、緊張もあってか多少ミスが目立ったものの、それでも、華ざかりの浅田真央選手、レオノワ選手を押さえて堂々の優勝、グランプリファイナル進出を決定・・・。

最近は、村主章枝選手の活躍などもあり、フィギュアスケートも10代で終わり、という世界ではなくなってきたが、その村主選手ですら、ピークは25歳を迎えた2005-06年(トリノ五輪カルガリー世界選手権)のシーズンで、それ以降のシーズンでのGPシリーズの優勝はない。

そんな中で、表現力のみならず、ジャンプまで進化を続けているなんて・・・


競技生活のブランクを経た末にバンクーバー五輪で遂げた24歳での華麗な復活劇。
そこで見事に8位入賞という結果を残したことで、彼女がいつリンクを去っても不思議ではないな・・・と自分は勝手に思っていた。

さらに、昨年の全日本で4位に敗れ、世界選手権出場の機会を失ったことで、現役続行への意欲が途切れても不思議ではなかったはず。

だが、今シーズン、休養に入った安藤美姫選手、不振にあえぐ村上佳菜子選手を横目に、完成度の高いプログラムでGPシリーズ2位、そして優勝という結果を出している彼女を見ると、いかに自分の憶測が浅薄なものであったか、ということを思い知らされる。

正直、この時期の完成度の高さは、必ずしも年明けの大きな国際大会での成功を保証するものではないし*1、ましてや、2シーズン先の五輪での成功を何ら約束するものでもない*2

それでも、挫折から這い上がって夢を掴み、さらに一頓挫してもまだ前を見て進み続け、その結果未だリンクで輝き続ける彼女の姿は、見る者に希望を与えてくれる。

この競技の場合、選手のピークの時期は短く、美しい瞬間はそんなに長くは続かない、そんな刹那さもあるからなおさら・・・。


なお、2位に終わったものの、浅田真央選手もジャンプのバリエーションが完全に戻りつつあって、フリーでは堂々の1位。おそらく、シーズン中盤〜後半になってくれば、世界の舞台で堂々の主役を張ることだろう。

ぼんやり見てしまいがちな五輪シーズン中間のシーズンではあるが、ここ2回ほどは日本人が主役を張ってきただけに*3、今回も男子ともども、日本勢の層の厚さとしぶとさに、期待したいところである。

*1:前半にピークを合わせ過ぎて、世界選手権で失速する選手を過去に何人も見てきた・・・。

*2:おそらく来季、さらにその次の五輪シーズンになれば、世界的にも一気に世代交代の波が押し寄せてくるのは間違いない。

*3:2004年は荒川静香選手が世界選手権優勝、2008年は浅田真央選手が同選手権初優勝。

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