「ゆうメール」商標をめぐる微妙な判断

小さな記事ではあるが、商標法フリークにとっては、ちょっと気になるニュースが一つ。

「「ゆうメール」のサービス名を商標登録している札幌市のダイレクトメール(DM)発送会社が、日本郵政郵便事業会社を相手取って商標使用差し止めを求めた訴訟の判決が12日、東京地裁であり、阿部正幸裁判長はDMやカタログなどの広告物を配達する場合の使用中止を命じた。郵便事業会社は控訴する。」(日本経済新聞2012年1月13日付け朝刊・第34面)

これだけ読むと、“親方日の丸”の国策会社が、商標のケアをうっかり怠って墓穴を掘った・・・という間抜けな事件のようにも思えてしまうが、記事にもあるとおり、郵便事業株式会社は、ちゃんと自分でも「ゆうメール」の商標を押さえている。

「ゆうメール」第4820232号
平成16年4月8日出願、平成16年11月26日登録
第39類 鉄道による輸送,車両による輸送,船舶による輸送,航空機による輸送,郵便,メッセージ又は小荷物の速配,メッセージの配達,物品の配達,通信販売者からの受託による商品の配送,新聞の配達,小荷物の配達,小荷物の梱包

「ゆうメール」第4821741号
平成16年4月8日出願、平成16年12月3日登録
第16類 印刷物,封ろう,荷札

それにもかかわらず、札幌市のダイレクトメール発送会社、株式会社札幌メールサービスが、郵便事業会社に先立つこと約1年前に、第35類(各戸に対する広告物の配布,広告,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,広告用具の貸与)で出願し、登録を受けた「ゆうメール」商標を保有していたことで(平成15年4月30日出願、平成16年6月25日登録、第4781631号)、東京地裁によって、まさかの差止認容判決を食らう・・・という展開になってしまった*1

確かに「広告物の配布」という役務で第三者が商標を保有していれば、広告物を内容とする配送サービスもこれに含まれそうだが、その一方で、第39類の各種配送サービスに係る指定役務の中に「広告物を含む配送サービス」も元々含まれているのではないか?という素朴な疑問も湧いてくるところで、役務類似=商標権侵害、という理屈が直ちに成り立つのか、と言えば、首を傾げたくなるところもある。

Wikipediaによると、「冊子小包」から「ゆうメール」に名称を正式に改めたのは、郵便事業株式会社が発足した平成19年に10月1日、ということのようだから、

「ゆうメールは郵便事業会社のサービスとして広く知られ、原告の商標権行使は権利乱用に当たる」

といった郵便事業会社側の主張もどこまで通用するか怪しいところはあるのだが、この辺は、判決文が最高裁HPにアップされ、事実関係と、差止認容を東京地裁が認めるに至った思考経過が明らかになった段階で、またあらためて考えてみることにしたい。

*1:IPDLによれば、この札幌メールサービスの商標に対しては無効審判が請求されているようだし、無効審判請求とほぼ日を同じくして、郵便事業株式会社自身による同じ区分での防護標章出願もなされている。