勇気ある選択?

ここ1、2年の間に、企業内に入ってくる法曹有資格者の数が恐ろしい勢いで増加している、というのは、既にあちこちで言われていることだが、1月18日付けの日経紙に掲載された記事は、そんな中でも、相当なインパクトを持って受け止められそうなニュースである。

北陸銀行は新人弁護士を総合職の行員として定期採用する。法務関係やM&A(合併・買収)仲介などの業務で専門知識を生かす。新人弁護士の就職難で地元出身者を中心に優秀な人材を確保できると判断、行員の専門性の向上を図る。」
「金沢大学の法科大学院ロースクール)出身者ら3人を4日付で採用し、コンプライアンス(法令順守)や債権管理の担当部署に配属した。20歳代の新人弁護士で、弁護士事務所への研修派遣なども通じて経験を積ませる。」(日本経済新聞2012年1月18日付け朝刊・第4面)

日弁連の弁護士情報検索を引いても、まだ登録された新人さんたちのお名前は出てこないから、直前にパタパタと採用した、ということなのかもしれないが、院卒総合職と同レベルの待遇で「会費、研修費用等、年約100万円の必要経費を会社が負担する」ということだから、決して悪い条件ではない*1

そして、何よりも凄いのが、この記事の中で、

「来年以降も年数人ずつ採用する。」

と書かれていること。

総合職の新卒採用がせいぜい100人程度の会社で、弁護士有資格者を3名採用し、しかも5〜10人の公認会計士を採用・・・ということになると、一体どういうローテーションで人材を配置していくのだろうか?と、いらぬ心配もしたくなってしまう。

「「就職難」が叫ばれながらも、採用できる人材のレベルは年々徐々に落ちている」*2
「特に法学部出身の学生が取りにくくなった」*3

という多くの日本企業がはまっている蟻地獄にこの会社もはまっていた・・・それゆえ、少しでも優秀な人材をコンスタントに確保したい、という思いで、↑のような話をオープンにして記事にしてもらった、ということなのかもしれないし、性格的・バックグラウンド的に会社への定着は見込みにくい(苦笑)*4、ということまで計算に入れての採用という面もあるのかもしれないけれど、この先、この会社に入った“バッジ組”が会社の中で一体どんな法律家としての人生を送っていくのか、そして、会社の「方針」が数年後一体どんなふうになっているのか・・・。

その辺を楽しみに、しばらくは温かく見守っていきたい話である。

*1:記事にある年収・年300万円という数字を見て「低い」と思う人がもしかしたらいるのかもしれないが、実際には、これに時間外手当やら何やら、という手当が付くし、銀行(というか大企業)の総合職社員の場合、その後の年収増のペースと確実性が“貧乏ヒマなし”のその辺の法律事務所よりも遥かに良いので、何年か真面目に働けば、このご時世、あっという間に大抵の同期は逆転できてしまうだろう・・・。

*2:最近、直に採用の現場に立ち会うことも少なくなったせいで、これが本当なのかどうか、ということは自分には良く分からないが、ここ数年で、人事・採用担当者のグチが増えたのは間違いない(笑)。

*3:これも一昔前の話で、最近では、法科大学院のあまりの不人気ぶりゆえ、法学部卒業後すぐに就職する学生もだいぶ市場に戻ってきてくれているようなのだけど・・・。

*4:有資格者に限らず、概して法務関係の仕事をしている人間の離職率は高い。企画・管理部門のホワイトカラーにしては珍しく転職市場が広がっている、というのが最大の理由だとは思うけど。

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