必然の勝利。

マイアミの奇跡”をテレビの前で見届けてから、気が付けばもう16年にもなるこの2012年に、自分は幸運にも俗に言う“ジャイアント・キリング”を再び目撃することができた。

日本U-23代表が1次リーグD組で、優勝候補のスペイン代表を1-0完封!

勝った相手が、当時、「世界最強」の名を欲しいままにしていた国の男子U-23チームで*1、どんなに贔屓目な紹介をするメディアも怖くて誰も勝つだなんて言えなかった(笑)こと、予選リーグの初戦、かつ「1-0」という最小スコアでの勝利だったこと、そして、自分に関していえば、いわゆるパブリックな場での観戦だったこと*2など、“マイアミ”といろいろとラップする部分も多い。

ただ、どのメディアも比較的冷静に取り上げていたように、今回の勝利に「奇跡」の二文字は似合わない。

CKから大津選手が先制点を決めたシーンは、多少の運にも恵まれたところはあるし*3、その後、試合を決定的なものにした相手CBの一発レッドも、審判によっては・・・という感のある判定だったように思うが、少なくとも、それ以外に日本がスペインの後塵を拝することを予感させるような要素は何一つなかった。

OAの吉田、徳永を中心に築かれた盤石の壁は、スペインの中盤から前の選手にほとんど仕事をさせなかったし*4、1点を取った後の、永井選手のハイスピードカウンターは、相手DFを完全に困惑させ、翻弄していた*5

そして、後半になって輝きを放った清武選手の進出鬼没の動き、そして、嫌らしいくらいのギリギリのところでのボールキープ。日本選手も、ここまで余裕を持って世界の大舞台でプレーできるようになったのか、と感嘆するくらいの落ち着きぶりだった。

アトランタの時のように、“運”だけを味方にしたわけでもなければ、シドニーの時のように際立つ「個」の力で勝ったわけでもない。

傑出した選手こそいないものの世界水準に近い選手が揃った11人*6が、常識的な戦略を徹底して実践したことで掴んだ勝利。

これを力の差が導いた「必然の勝利」と言わずに何と言おう。

何より、“ジャイアント・キリング”的な高揚感とは無縁の、「あともう1,2点取ってれば楽な試合になったのに・・・」的な監督、選手のコメントが、「必然」さを象徴している。

既に一部メディアでは指摘されているとおり、今まさにオフ&次のチーム作りが始まっている欧州において、各国の代表チームが、五輪に向けてベストメンバーを揃えるのは不可能に近いわけで、いかに欧州V2のスペインとはいえ、その状況に変わりはなかったわけだから、試合前にもう少し強気の予想がメディアを賑わせても良かったんじゃないかな・・・と、今になれば思ったりもするのだが、いずれにせよ、最初に「勝ち点3」を取った事実に変わりはない。

恐らくメンバーを大幅に入れ替えて臨むことになるであろうモロッコ戦で、宇佐美選手のドリブルが炸裂するようなら、グループ1位での決勝トーナメント進出、そして今大会での大躍進の可能性も見えてくるだけに、ここはもう一丁、「必然の勝利」を期待してみることにしたい(ま、決勝トーナメント進出については、そんなに心配はしていない・・・)。

*1:アトランタ五輪の直前の94年W杯で優勝を飾ったのは闘将ドゥンガが率いるブラジルだったし、直近のW杯の優勝国は言わずもがなスペインである。

*2:何だかんだ言って普通は家でゆっくり見ていることが多い人間なので、外で見ていた試合はそれだけで印象に残る。

*3:CKからのセットプレー自体に、運の要素は大きいし、大津のシュート自体、決してきれいに決めたものではなかった。

*4:スペイン戦のDF陣には、金一封あげても惜しくない。日本サッカー界の歴史に残る、守備陣が輝いた日、だったと思う。

*5:あれで何度かあった決定機を決めていたらもっと楽になったのに・・・というコメントは多かったが、あのスピードで走り続けて、シュートまで決めてしまったらそれこそ漫画の世界の主人公だ。前線からプレスをかけて相手に自由にボール回しをさせない、というのが1点リードした後の選手たちの最大目標だったわけで、その点については完璧に業務を遂行したのが、この日の永井選手だったと思う。

*6:冷静に考えれば、これだけ多くの選手が海外のクラブに在籍しているU23代表、というのは、これまで存在しなかっただろうと思う。

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